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幻影の胡蝶 〜桃源郷の寵妃達〜
第4章 美しき桃源郷
「まぁ、顔に出ちゃい過ぎる性格なのは、桃源郷では不利かな?」

子供を嗜めるように、玄武は言った。

素直な所は胡蝶の可愛い所ではあるが、幼過ぎるその性格は桃源郷では彼女を追い詰める事になりそうだ。






朱雀との初めての出会いがよい思い出になれなかったのは、朱雀の性格もあるが、胡蝶の責任だとも思っている。






(本当に、もっと……。)

【胡蝶】の名前を使うなら、【胡蝶】の様に振る舞えれば良かったのに。






【胡蝶】は全ての男性をどう扱えばいいかよく知っていた。

それは彼女の生前の生き方が彼女にその術を教えていた。






彼女は生前は遊女として、遊郭ではその名前を知らない者は居なかった。

胡蝶が目線を配れば誰もがその振る舞いに目を留める。

その目線1つ1つ全てに胡蝶の計算が細かく組み込まれているにも関わらず。

分かっていても、誰もがその目線の虜になる。






どんな声色で名前を呼ぶか。

どんな風に男性に触れればいいのか。

その全ては胡蝶の体に刻み込まれていた。






誰もが【胡蝶】を愛して仕方の無い女だった。







そんな【胡蝶】の名前を語ったのが、こんなにも恋愛に幼い子だなんて、朱雀が目を瞑りたくなるのもよく分かる。







まぁ逆立ちしても、胡蝶は【胡蝶】に似ることは出来ないと、玄武は1人納得する。

だけど、その不完全な胡蝶がまた、彼には可愛かった。







「…桃源郷で嫌な思いをさせた事は謝るよ。
特に朱雀はね……と言うより、あの3人は個性豊かでね。
俺の話なんて聞きやしないから。」







玄武は胡蝶の手を離すと、大きなため息を吐いて椅子に深く座った。

他の四神達には苦労させられているんだと、なんと無く胡蝶は感じた。








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