この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第78章 怪力乱神(かいりきらんしん)
彼の脳裏にはかつて経験した文化祭の時の記憶が鮮明に蘇っていた。

沙也加に絡んでいた大きな男
そいつに簡単に押さえつけられてしまった無力な自分
情けないものを、憐れなものを見るような沙也加の目・・・

弱い、弱い、弱い、ヨワイ、ヨワイ・・・・

繰り返す波のような悔恨が脳を再び侵食し始める。
フラッシュバックする級友たちの嘲笑
それが真実でも、虚構でも
その全てがカダマシの脳髄をグリグリと容赦なく抉っていった。

冷や汗が背筋を流れ、項がチリチリとする。
緊張のあまり眼瞼が痙攣し、息が荒くなっていった。
生玉の力を使うのも忘れ、全身から力が抜け、身体がしぼみ始めていた。

カダマシの心は、完全に折れてしまっていたのだ。

ーダメだ、負ける・・・また、戻る
 元に・・・元の情けない、俺に・・・

久しく湧いてこなかった涙が溢れ、涙腺を決壊させようとしたときだった。
カダマシの脳の奥底から、湧き上がってくる声があった。映像があった。

それは、お館様のビジョンだった。
宙空に、ここにはいないはずのお館様がすっと立っている。

スラリとして、いつでも強く、己を曲げない。
どんなに残酷なことでも自分の思ったことなら平気で実行できる、強い男。

憧れていた。
あなたのようになりたいと思っていた。
あなたがくれた力を誇りに思っていた。

お館様・・・お館様・・・

あなたについていけば、強く、強くなれると思っていた・・・お館様・・・

『カダマシ・・・』

宙に浮かぶ彼の口が動いた。
夢のように、語りかけてきた。

『カダマシ・・・
 弱い奴はね・・・ダメなんだよ
 根っから
 何をしても』

何を・・・何を言ってるんですか?
お館様・・・
カダマシの口の中はカラカラに乾いて、舌が張り付きそうになる。
浅い呼吸が繰り返され、心臓が早鐘のように打つ。

『無駄なんだよ
 生きてるだけ、無駄。
 お前のような弱い男は、
 どう努力しても
 死ぬまで、一生・・・』
/1067ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ