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天狐あやかし秘譚
第79章 義勇任侠(ぎゆうにんきょう)
息をヒュウと吸い込み、土御門がありったけの声を上げる。

「黄泉平坂が開いた!陰陽寮総員、黄泉を封じるのに全力で当たれぇい!
 決して、この結界から黄泉を溢れさせるな!」

そして、首筋に嫌な予感を感じ、くるりと振り返った。

そこではヤギョウが黄泉の力を吸収し、その身体を一回り大きくしていた。ヤギョウから溢れる力に勾陳の束縛が耐えきれなくなり、ちぎれて消えた。

更に右翼の戦場に目をやる。
クチナワが呼び出した妖魅たちもまた、黄泉から溢れる瘴気を受けて力を増していた。鎌鼬が、雷獣が、猫又が、山伏狼が・・・そして、天から再び現れた大妖『鵺』が、身体を大きくし、その凶暴性を増して陰陽師たちに襲いかかっていた。

ーあかん・・・また、形勢逆転や・・・

戦況を読まなければ。
今のこちらの戦力は?
カダマシはどうなった?天狐ダリは?
他の陰陽師たちの状況は?
そして・・・黄泉平坂はどうなっている?

一度に頭の中をいろいろな思考が巡り、パニックに陥りそうになる。

「クソ・・・一体どうなっとるんや!」

何をしたらいい。
何を優先させるべきだ?

首無しの死霊を倒すべきか?
黄泉平坂を塞ぎに回るべきか?
陰陽師たちに何を指示すれば・・・

心拍が上がり、目の前が真っ赤になるように感じる。世界が霞がかったようになり、音がやけに遠くに聞こえる。視野が狭まり、思考が空回りし始めていた。

背にたらりと一筋、冷や汗が流れた。

ーあかん、あかん・・・どうするべきや、
 どうしたら・・・あかん、考えがまとまらへん・・・

その時、ふわっと身体が温かいものに包まれた。
懐かしい匂い。
優しい感触。

「土御門様・・・落ち着いてください」

馴染んだ、愛おしい声。

「瀬良・・・」

瀬良が、棒立ちになっていた土御門を抱きしめていた。

「あなたは助の一位。日本最強の陰陽師。私の主(あるじ)です
 絶対に、勝ちましょう」

ぎゅっと、抱きしめる腕に力がこもった。

目の焦点が合う。耳が周囲の音をクリアに拾い出す。
視界が晴れ、手に、ぎゅっと力が戻る。
右手の将軍剣の柄を握り直し、左手で、瀬良の背を一度だけ強く掻き抱く。

「もう、大丈夫や。ありがとな。勝つで。もちろんや
 わいは、儂らは、日本の守護・・・最後の砦、宮内庁陰陽寮やからな!」

土御門の目に、再び生気が戻っていった。
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