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天狐あやかし秘譚
第80章 絶体絶命(ぜったいぜつめい)
☆☆☆
「結界内には黄泉の瘴気が溢れています。必ず、この瘴気除けの符を身に着けてください。それから・・・」
日暮が心配そうに私を見る。私はリュックに今準備できる最大限の装備を入れ、準備は万端だった。お腹のあたり、服の下には、先程日暮からもらった呪符が、そして、胸ポケットにはアレキサンドライトが入っている。

「・・・行ってらっしゃい・・・」

ぎゅっと、日暮が私のことをハグする。
5秒くらい、抱きしめ終わると、彼女は符を一枚取り出した。

縦長の符には五芒星と肉球を思わせる4つの円。一番大きな円の中には「鬼」と朱文字で書かれていた。それを右手の人差し指と中指ではさみ、ピンと立てる。

「鬼々夜叉神 太陰 生門 荒御魂来世」

符が黄色く光り、風もないのにひらひらとはためく。

「おいでませ!ニャンコ先生!」

日暮が指を離すと、ひらりひらりと舞い降り、その途中でくるりと回転して一匹の黒猫になった。

日暮の式神『猫神』である。

シュタと、地面に降り立つ凛々しい顔つきの黒猫。ぐぐーッと前足を伸ばしてノビをしている様子を見るとただの黒猫なのだが、まごうことなき妖怪であり、日暮の式神である。

「あの・・・さ、さっきも気になったんだけど、なんで、呼び出すときにニャンコ先生、なの?」

そう、作戦が始まる前も彼女は、この猫神を『ニャンコ先生』と呼んでいた。九条や土門、土御門なども式神を使うが、その時はちゃんとその式神の名前を呼んでいたような気がする。そう考えると、実は『猫神』というのがあだ名で『ニャンコ先生』が本名・・・なわけないか。

私のこの疑問に、ああ、と得心したように日暮が微笑む。
「最後のところ、あれ、別に何を言ってもいいんです。勧請の呪言は『鬼々夜叉神 太陰 生門 荒御魂来世』ってところまでなんですよ。呪言部分さえしっかりしていれば、式神は名を呼ばなくても現れますから」

言われてみれば、土御門も敵に名を説明しているときには式神の名を口にしていたが、呼び出すときには言っていなかった。九条がやたらと気取って『行け・・・僕の白鷺姫』とか言っていたのが印象的だったので、なんとなく式神の『名』を呼ぶものだと思っていたのだけど、それは個人の好みらしい。
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