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天狐あやかし秘譚
第83章 一業所感(いちごうしょかん)
右手を横に伸ばすと、そこに直剣が現れた。神の武具としての名はないものの、それが放つ光と重苦しいほどの圧が、その権能を如実に示していた。

ー妾が畏れを抱くことなど、あっては・・・あってはならぬことじゃ!

イザナミは剣を振りかざす。たったそれだけの動きで、剣に凄まじいまでの呪力が宿り、溢れた力は紫電と化して刀身を覆った。

「良かろう・・・主らはもはや『骸』にすらせぬ。二人まとめて三界から失せるがいい!」

イザナミが放つ超高密度の呪力が黄泉平坂に溢れかえる。
綾音はその光景を夢の向こうのように眺めていた。

『ごめんなさい・・・ダリ・・・私、あなたを守れなかったよ・・・』

せめてもと、再び動かぬ四肢を無理矢理動かし、立ち上がる。震える両の手を広げ、背後のダリを守ろうとする。

『最後まで・・・一緒・・・だから・・・』

涙が、頬を伝って、また一粒・・・落ちた。

綾音も、その後ろで妖力を使い果たし身動きひとつ取れなくなっているダリも、落ちてくる神の力を予感した時、ひとつの異変が起こった。

「は・・・離せ!!」

イザナミが驚いたような声が響いた。その声にハッとして、綾音が目を見開く。
彼女の目に写ったのは、イザナミの右腕と腰に絡みつく、二体の『骸』だった。腕を取っているのはメガネを掛けた男性、腰にしがみついているのはふくよかな女性だった。

「あ・・・が・・・うう・・」
「ぐあう・・・あ・・・」

声にならない声を上げ、ちぎれかけた腕や足を必死に使ってイザナミを止めようとするその姿を見て、綾音は先程の光景を思い出していた。その二体は、確かにイザナミが呼び出される寸前、麻衣が目にした両親の姿だった。

彼らはあたかもイザナミの中にいる麻衣が人を殺めるのを止めようとしているかのようだった。生命なき『骸』となってなお、娘を守ろうとする親の姿だった。

「なんだ!?なぜ骸がっ!?」

イザナミの精神が乱れた時、彼女の胸の中心から、ぼやっと浮かび上がるものがあった。それは少女の姿、片霧麻衣のそれだった。

「ま・・・いちゃん・・・」

なぜ・・・麻衣ちゃんの姿が?・・・その理由はわからなかった。
もしかしたら、両親の骸がイザナミを止めようとし、それに動揺したイザナミの力が弱まったせいなのだろうか。依代として取り込まれたはずの麻衣が分離しようとしているのだ。
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