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天狐あやかし秘譚
第85章 興味津々(きょうみしんしん)
☆☆☆
愛理の母、祥子への別れの挨拶もそこそこに、マンションを飛び出すと、私はニャンコ先生を呼び戻した。

ニャンコ先生と二人で愛理の部屋の窓の下を仔細に調べる。

やっぱり・・・

そこには呪力の痕跡がまだ残っていた。ふんふんとニャンコ先生がその痕跡の臭いを嗅ぎ、顔をあげて左右を見回すような仕草をする。

「追えますか?ニャンコ先生・・・」

聞くと、にゃあ、とちょっと自信がなさそうな声が帰ってきた。というか、不満そうであった。

『あたしは、犬じゃニャい』

そう言っているような気がした。
多分、追えると思うんだけどなあ・・・。

仕方がない。私は背負っていたバックの中から『占布』(せんぷ)を取り出して地面に広げた。占布とは、中央に太極図、周辺に二十八星宿を顕す卦が描かれている私専用の占術用具だ。私はこの占布と、いくつかの自然石によって占う『石占』を最も得意としていた。

石を革袋からひとつかみ取り出すと、額に持っていく。呪力を注ぎ込みつつ、呪言を奏上した。

「夕占(ゆうげ)問い 石占もちて 占正となせ
 ももづたふ いはれをつげよ その山神よ」

石に秘められた力と私の呪力、それから大地から湧き上がる土気の霊力が共鳴し、石たちが微小な振動を始める。その振動が最大になったところを見計らい、最後の呪言を唱える。

「宣!」

同時にばらりと占布の上に手にした石をばらまく。石は大地に連なる地脈に呼応し、世界を模式的に表した太極図の上に、天意を顕す。私は、その天意を石の配置から読み取るのだ。

最後の石が転がるのをやめ、止まる。振動が落ち着き、占布の上に運命の配置図が完成した。

「方角は北西、距離は1300。そこがひとつ。それから・・・」

そんな・・・。

私はニャンコ先生を見た。私の焦った気持ちはそっちのけで、のどかに顔を洗っている。

「ニャンコ先生!そんなことしている暇じゃないよ!このままじゃ愛理さんが・・・外国に売り飛ばされちゃう!!」

慌てて今の占術で判明した拠点をメモに取ると、ニャンコ先生の首に巻き付けた。

「お願い、ニャンコ先生!これを土門様に届けて・・・!」

お願いね、っと額にチュッとキスをする。にゃ!と短く鳴いたニャンコ先生は、するりと私の手をすり抜けて、タタタタタッと走って街中に消えていった。
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