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天狐あやかし秘譚
第98章 大信不約(たいしんふやく)
だから、この妖怪たちとの鬼ごっこの間、私はダリに助けてもらうことができない。彼がいるところ、この先にある広い公園まで、ひたすらに妖魅達を引き付けながら走る・・・それが使命なのだ。

そ、それは分かっているけど・・・こ、怖いぃいいぃい!!

魑魅たちの足は基本遅いが、立ち止まることもない。こっちは疲れてだんだんペースが落ちてくる。次第に距離が詰まってきてしまい、それはそれでものすごいプレッシャーだ。最初は20メートルほど離れていたのに、今はほんの5メートル後ろまで魑魅たちが追いすがってきてしまっている。

も、もうすぐ公園・・・!
ま・・・間に合って!!

目を瞑って、闇雲に走る。そして、とうとう、最後の街路樹を超え、街灯の下を駆け抜け、私は綿貫亭に最も近い公園の敷地に飛び込んだ。

その公園の広場の中央には、人払いの結界を張り終えたダリが、退魔の槍を構え、私の到着を待っていた。

「だ・・・ダリ!・・・お願い!」

その横を通り過ぎると、ダリが薄く笑う。

「綾音よ・・・よくやった・・・」

槍を頭上でくるりと回す。魑魅たちが公園の入口からなだれ込み、広場をまたたく間に埋め尽くしていく。私はダリの背後にへたり込んで、まるで泥水のように流れ込んでくる魑魅達の勢いにただただ恐れおののいていた。

あ・・・あんなにいたの!?

その数、千などという単位ではないように見える。数千にも及ぶ異形の黒影がぐねぐねと身体をくねらせながらダリが張り巡らせた結界の唯一の入口からなだれ込んでくる。

結界内が瞬く間に魑魅たちの群れで埋め尽くされる。ひとつひとつは取るに足りない雑霊なのだろう。しかし集まればそれなりの妖力となる。現に、大した霊感のない私にも、背筋がゾワゾワするような、首筋がチリチリするような圧倒的な『力』を感じてしまっている。

しかし、ダリは一向に動じる気配がない。
それどころか、口角を上げ、楽しそうな気配すらある。

その、唇が歌うように呪言を刻む。

「かむとけの 光る空より 鎖(さ)せよ稲霊(いなだま)
 ちはやぶる 天津剣(あまつつるぎ)よ かむさびてあれ」

彼の歌が朗々とあたりに響き渡り、夜空に澄み昇っていく。その言霊が宙空に満ち満ちた時、世界がブルリと震えた・・・ような気がした。
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