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天狐あやかし秘譚
第98章 大信不約(たいしんふやく)
色男の群れってなんだよ、と思って見てみたら、何かのイベントなのだろうか?デビュー前のジャニーズJr.(今はジュニアっていうのか?)のような子がダンスパフォーマンスをしていた。

『あ・・・あれはダメよ!芸能人じゃない!』
『綾音様の好みかと思ったのですが』

・・・。そうか、見えていなかっただけで、佐那には私が自室でどんなことをしていたか・・・バレてるから・・・
ちょっと、何をしていたかは黒歴史過ぎてここでは言えないが、私の好みや妄想をある程度熟知していると思われるこの狐にあまりペラペラと喋らせるわけにはいかないと私は堅く誓ったのだった。

『とにかくあれはダメ!』
『そうですか・・・では、あちらはいかがでしょう?あれに見えるは観客であり、芸能人ではないでしょう?』

そこには爽やかな二人連れの高身長男子が歩いていた。
二人は対照的な出で立ちで現れた。

一人は、目の覚めるような鮮やかなブルーのシャツを、白のロゴTシャツの上にラフに羽織っている。ボトムスは黒のスラックスで引き締め、足元には真っ白なスニーカーだ。
もう一人は、どこか眠たげな、柔らかな雰囲気を纏っている。くすんだ青緑(ティールブルー)のカーディガンに、洗いざらしたようなベージュのチノパン。足元は素足にサンダル・・・だいぶラフな感じだ。

正反対だからこその友達・・・なのだろうか?
確かに・・・かっこいいかも・・・

『早速、声をかけましょう!』
ぐいっと身体が勝手にイケメンふたりに吸い寄せられるように動いていこうとするのを慌てて止める。

『ちょっと・・・待ってよ!まだお母さんを案内しているところだし!』
『そんな事を言ってては男に逃げられまする!』

「綾音?何しよんあんた?」

母に声をかけられ、慌てて佐那との『会話』を打ち切った。
とにかく、そういうことは夜まで待ってよ!

そんな気持ちだった。
こんなことで、私は夜までもつのだろうか・・・そして、果たして本当に・・・しちゃうのかな・・・。

胸に、ちょっとトクンとトゲが刺さったような・・・そんな感じがしていた。
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