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天狐あやかし秘譚
第98章 大信不約(たいしんふやく)
ふんふんと『それ』が獣の鼻を鳴らす。
少なくともこの風に混じる匂い・・・この匂いは乙女のそれだ。
フシュウウウ・・・・
口から獣臭い息を吐いて、それはにやりと笑った。
また、フンフンと鼻を鳴らす。
風の中に幾重にも折り重なる人々の匂いの中・・・はっきりと嗅ぎ分ける。
するりとした匂いの筋が宙空に『視える』気がした。
あゝ・・・あったよ・・・
間違いない、あの娘の匂いだ・・・
獲物を見つけた『それ』は、早速、建物の屋上から地面に降り立とうと眼下を望む。
だが、そこに無数に蠢く人の子を見て、『それ』は躊躇した。
人に見られる、わけにはいかない・・・
だとすればどうする?
どうしたらいい?
闇に紛れるのがよい
それが結論だった。
人の子が渋谷と呼ぶ街は、決して『それ』が過ごしやすいところではない。だからこそだ。早めに獲物を平らげて、また山に帰ろう。
そう考えた『それ』は・・・『モノ』と呼ばれた闇の獣は、一眠りするために目を閉じる。
夜、人達が寝静まり、獲物が独りきりになるのを待つために・・・。
少なくともこの風に混じる匂い・・・この匂いは乙女のそれだ。
フシュウウウ・・・・
口から獣臭い息を吐いて、それはにやりと笑った。
また、フンフンと鼻を鳴らす。
風の中に幾重にも折り重なる人々の匂いの中・・・はっきりと嗅ぎ分ける。
するりとした匂いの筋が宙空に『視える』気がした。
あゝ・・・あったよ・・・
間違いない、あの娘の匂いだ・・・
獲物を見つけた『それ』は、早速、建物の屋上から地面に降り立とうと眼下を望む。
だが、そこに無数に蠢く人の子を見て、『それ』は躊躇した。
人に見られる、わけにはいかない・・・
だとすればどうする?
どうしたらいい?
闇に紛れるのがよい
それが結論だった。
人の子が渋谷と呼ぶ街は、決して『それ』が過ごしやすいところではない。だからこそだ。早めに獲物を平らげて、また山に帰ろう。
そう考えた『それ』は・・・『モノ』と呼ばれた闇の獣は、一眠りするために目を閉じる。
夜、人達が寝静まり、獲物が独りきりになるのを待つために・・・。

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