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天狐あやかし秘譚
第11章 【第4話 女怪】福善禍淫(ふくぜんかいん)

☆☆☆
どうやら女性は橋に行った記憶も、欄干から落ちた記憶もないらしい。落ちる瞬間は芝三郎と清香ちゃんが見ているので、彼女が自分自身で欄干に登ったことは明白なのだが、それについてもまるで覚えていないということだった。
ただ、彼女の様子は普通じゃなかった。小刻みに震えていたし、唇の色は青く、目の下に隈ができていた。
何日もろくに寝ていないし、食べてもいない様子に見えた。加えて、私達や周囲を見る目がとても怯えているようだった。
「念のため、病院に行ったほうがいいかもしれないですね」
顔色の悪さも気になるが、記憶がないというのはもっと気になる。外傷はないが、頭を打ったりしているのかもしれない。調べると近くに大きな救急病院があるので、そこに連れていくことにした。
病院の救急外来まで同行し、受付を済ませる。大まかな事情を看護師さんに話しておいた。ただし、ダリが空中でキャッチした、とは言えない。(当たり前だ)
「えっと、落ちる寸前で、彼が腕を掴んで引き上げたんです!」
と言い張った。かなり苦しいが。
預けてそのままバイバイできるかと思ったが、私が自殺の虞があると言ったものだから、警察沙汰になってしまった。病院からの110番を受けて駆けつけた制服のお巡りさんにも事情聴取を受ける羽目になる。
ああ!不動産屋さんに行かなければいけないのに!
さらに、そのお巡りさんから「申し訳ありませんが、もう少しお待ち下さい。本署から、いや、本庁から捜査員が来ると言っています。」と言われてしまう。
一体どんだけ時間を取られるんじゃ!
仕方がないので、病院に併設しているコンビニでスイーツを買って芝三郎と清香ちゃんに食べさせる。暇を持て余した二人が病院内をバタバタと走り回り始めてしまったからだ。
ダリも、じーっとコンビニのお酒売り場の日本酒を見ていたが、それについては黙殺した。悪いけど、出費抑えたいの・・・ごめん。
結局、たっぷり1時間弱は病院で待つことになった。病院の食堂で、清香ちゃんと芝三郎に待合から借りた絵本を読んであげていたとき、二人の男性に声をかけられた。
どうやら女性は橋に行った記憶も、欄干から落ちた記憶もないらしい。落ちる瞬間は芝三郎と清香ちゃんが見ているので、彼女が自分自身で欄干に登ったことは明白なのだが、それについてもまるで覚えていないということだった。
ただ、彼女の様子は普通じゃなかった。小刻みに震えていたし、唇の色は青く、目の下に隈ができていた。
何日もろくに寝ていないし、食べてもいない様子に見えた。加えて、私達や周囲を見る目がとても怯えているようだった。
「念のため、病院に行ったほうがいいかもしれないですね」
顔色の悪さも気になるが、記憶がないというのはもっと気になる。外傷はないが、頭を打ったりしているのかもしれない。調べると近くに大きな救急病院があるので、そこに連れていくことにした。
病院の救急外来まで同行し、受付を済ませる。大まかな事情を看護師さんに話しておいた。ただし、ダリが空中でキャッチした、とは言えない。(当たり前だ)
「えっと、落ちる寸前で、彼が腕を掴んで引き上げたんです!」
と言い張った。かなり苦しいが。
預けてそのままバイバイできるかと思ったが、私が自殺の虞があると言ったものだから、警察沙汰になってしまった。病院からの110番を受けて駆けつけた制服のお巡りさんにも事情聴取を受ける羽目になる。
ああ!不動産屋さんに行かなければいけないのに!
さらに、そのお巡りさんから「申し訳ありませんが、もう少しお待ち下さい。本署から、いや、本庁から捜査員が来ると言っています。」と言われてしまう。
一体どんだけ時間を取られるんじゃ!
仕方がないので、病院に併設しているコンビニでスイーツを買って芝三郎と清香ちゃんに食べさせる。暇を持て余した二人が病院内をバタバタと走り回り始めてしまったからだ。
ダリも、じーっとコンビニのお酒売り場の日本酒を見ていたが、それについては黙殺した。悪いけど、出費抑えたいの・・・ごめん。
結局、たっぷり1時間弱は病院で待つことになった。病院の食堂で、清香ちゃんと芝三郎に待合から借りた絵本を読んであげていたとき、二人の男性に声をかけられた。

