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天狐あやかし秘譚
第99章 焦眉之急(しゅうびのきゅう)
☆☆☆
渋谷で買い物をした後、マックで腹ごしらえをし、原宿でスイーツをとなって移動をしていた。スイーツと言ってもそれほど高いものではなく、カップに入ったアイスクリームをふたりで分け合いながらウィンドウショッピングをしたり、礼はUFOキャッチャーでぬいぐるみをゲットしたりと、そんな感じで楽しんだ。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、17時を回ってしまっていた、さすがにそろそろ暗くなるし、帰ろうかということになった。多分、礼の家はもう少し遊んでても大丈夫なのだろうけど、私の家がダメだというのを知っていたからだった。

「じゃあね!涼華!気をつけて帰ってね!」

JR原宿駅の改札に消えていく礼に手を振る。礼には『私、千代田線で帰るから』と言ったが、それは嘘だった。少しでも電車賃を節約するために、代々木公園を抜けて代々木八幡まで歩くつもりだった。

私がこんな不自由な生活をしているのも、私には両親がいないからだった。父と母は私が幼い頃に離婚をし、その母も私が5歳のときに山で遭難してしまった。母の実家の近くの山にふたりでハイキングに行ったとき、私たちは道に迷ってしまったようで、気がついたら私だけが道路の真ん中で泣いていて保護されたらしい。

以来、私は10歳までは祖父母の家で育てられ、祖父母が他界すると、遠い親戚という今のおじさんおばさんの家に引き取られた。おじさんもおばさんも気立てはよく、私の事情も分かってくれてはいたが、やっぱり肉親ではないということが私の気持ちにブレーキをかける。甘えたりしてはいけないし、困らせてはいけないとどうしても思ってしまうのだ。

おじさんのお陰で私はきちんと志望校に入ることが出来た。高校も望みのところを受けていいと言われている。少しでも負担を少なくするために、月々のお小遣いも最小限にして貰っているし、高校では奨学金を取れるように勉強も頑張っていたのだ。

でも、こうして、お友達と別れてひとりでいて、暗くなり始めた空を見上げると、そんな生活にちょっと疲れている自分を見つけたりもする。
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