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天狐あやかし秘譚
第100章 死中求活(しちゅうきゅうかつ)
何のヒントもない。看板や人の気配すら・・・どちらに向かっていいのかわからないまま、とにかく走るしかなかった。次第に疲れて足がもつれ始め、駆けるペースも落ちてきてしまった。

「ほらほら、早く逃げぬと、喰ってしまうぞ・・・お前の母親のように喰ってしまうぞ・・・」

首の後ろがチリチリと粟立つ。あいつの声がするたびに脳髄が揺らされ、否が応にもフラッシュカードのように記憶が呼び起こされる。

動けない私、ぽっかり空いた森の一角
私の目の前に転がってきた母の頭
黒い獣がずるりと母の内蔵を腹から引き出す
血を滴らせて笑うその表情・・・

呼吸が荒くなる。息を吸おうとしても肺が痛くて空気を受け付けない。足がガクガクして鉛のように重くなり、足を前に進めようとしても、もつれて転びそうになってしまう。

ダメ・・・もう・・・もう・・・!

それでも必死に走り続ける。道なりではダメだと思い、藪に飛び込み、体中に引っかき傷を作りながら、それでもがむしゃらに体を前に押し出す。しかし、それでもぴったり後ろについている異形の気配を引き離すことはできなかった。

とうとう、疲れが足に来たのだろう。木の根っこに躓いて、私は盛大に転んでしまう。その拍子に足をくじいたのか、思うように立てなくなった。

上を見ると、そこは木々がまあるく開けている不思議な場所だった。さっきまでは真っ暗だったはずの空から一筋、どろりとした月明かりが降り注いでいた。

ガサガサ・・・

背後で藪がざわめく音がする。恐る恐る振り向くと、藪を揺らしてソイツがのそりと現れた。

「同じだなあ・・・同じだなあ・・・。お前の母と同じだなあ・・・」

にたりにたりと笑うその表情は、記憶の中のそれと全く同じだった。

「いや・・・」
私はなんとか抵抗しようと、手元に転がる石を投げつける。しかし、それは獣にかすることすらなく、手前の草地に落ちただけだった。

「もう、逃げぬのか?ならば・・・食うとしよう・・・今宵、約束の10年目だ」

獣が私に覆いかぶさってくる。身体が震えて動かない。獣の臭気が、死の匂いが私の身体を覆い尽くさんとしてきた。大きな口が開き、生暖かい吐息がかかった瞬間、私は何故か母のことを思い出していた。

ごめんなさい・・・お母さん・・・
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