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天狐あやかし秘譚
第100章 死中求活(しちゅうきゅうかつ)
その言葉通り、丁度おへそから拳一個下くらいの部分がほんのりとあったかくなったような気がした。全身に奇妙な力が満ちてくるのも感じる。

これなら、いけるかもしれない!

「じゃあ、私が右に走るから、左に走るの!いいわね!?」

とにかくここから・・・母からあいつを引き離す!

「行くよ!」

私と女の子は弾かれたように左右に分かれて走り出した。獣は一瞬、動揺したように私たちふたりを目で追っていた。どちらを追うべきか、と考えたに違いない。しかし、迷ったのもほんの数秒程度だった。彼は、その時にひときわ自身を引き付ける存在・・・すなわち私、なのだが・・・を追うことに決めた。

ぐいっと頭をこちらに巡らせ、四本の長い手足を奇妙に動かしながら、こちらに向かって来た。ちらりと見ると、先程の女の子は、反対方向に向かって走っていっていた。

お願いね・・・助けを呼んできて。

足にぐいと力を込めて、私は闇の中、走っていく。あの女の子が無事に結界を抜け、陰陽寮の誰かを呼んできてくれることを信じて・・・。
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