この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第101章 純粋一途(じゅんすいいちず)
「あな・・・珍し・・・狐の子か?」

ぼんやりしていると、突然、後ろから声をかけられた。たおやかな女性の声だった。人の言葉だというのに、何故か私はその意味するところが理解できることに驚いた。

本当なら、逃げなくてはいけないのだろうが、その時の私はなぜか、この人は大丈夫と思っていた。今となっては顔もよく覚えていないが、とても優しそうな人だったのは間違いない。

その女性は私を抱き上げると、何事かを語った。それは歌のようでもあり、物語のようでもあり、話し声のようでもあった。何を言われたかよくは覚えていない。そして、それから長い時間、私はその女性とそこで過ごした気がした。

5年?それとも10年?・・・もしかしたら100年だったかもしれない。

ある時、女性は言った。

「帰りたい?子狐よ」

私は他の兄弟が少し心配になっていた。みな、ここに来れば食うに困らない。だけど、他の兄弟を連れていきたいと言った時、女性は悲しそうな顔をしたようだった。
済まない・・・と、その女性は言った。
それが、その淵での私の最後の記憶だった。

気がつくと、私は森の中を彷徨っていた。天を見ると、すっかり日が暮れていた。あの水のお陰で腹は減っていないし、不思議と、いろいろなことを理解できるようになっていた。

なんだろう・・・奇妙な感じだ。

身体も大きくなっているような気がした。そして、お腹の底に、なにか説明できないような力を感じてもいた。

その時、ガサリと目の前の藪が揺れ、狼が現れた。
狼は子狐を喰う。それが判った。

逃げる・・・?

何故だろう。すぐに逃げるということをしなくてもいいと思った。狼は先刻までの私のように腹を空かせている様子だった。よく見ると、肋(あばら)が浮いており、よだれをひっきりなしに流している。その目は久々の獲物を前に狂喜の色をにじませていた。

ぐるるるうぅ・・・

一声唸ると、そいつは私に躍りかかってくる。しかし、そんな光景を、私はまるで別の世界で起こっているかのように冷静に眺めていた。その時にどうすればいいのか、何故か判っていたからだ。
/1450ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ