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天狐あやかし秘譚
第101章 純粋一途(じゅんすいいちず)
☆☆☆
野狐になった私は、すぐに森から人里に降りることを覚えた。そっちのほうが精の付く食べ物が多いことにすぐ気づいたからだ。

神通力の使い方にも長けていった。狼を追いやったように、それそのものを牙とする方法、それから別のものに姿を変える方法、実際にそこにはないものを人や動物に見せる方法・・・

ついこの間まで飢えていた分、私は散々、人々から奪い続けた。神通力を持った私を止めるものは何一つないと思っていた。

そう、この時の私は慢心していたのだ。

しかし、それは長くは続かなかった。
私のいたずらに手を焼いた里人は、近隣の村から不思議な力を使う術師を呼び寄せていた。その術師の力は本物だった。

私が何に化けてもすぐに見抜いて、追いかけてきた。
幻の術も通用しない。そして、見えぬ牙もその剣で打ち払われた。

最後、フクロウになって逃げようとしたところで、術師が打った網に、私は捕まってしまった。

『野狐よ・・・失せよ!』

術師が剣を私の脳天に振り下ろそうとしていた。
その瞬間、私は思ったのだ。

ああ・・・なんて・・・なんてつまらない一生だったのだろう・・・と。

結局、兄弟には会えなかった。

『野狐』・・・それは私の名ではない。
誰も私の名を呼ばない。
私も誰のことも呼ぶことがない。

ツガイを見つけることもない。
子を成すこともない。
名すらなく、誰も私が生きたことを覚えることもない。

傷つけて、奪って、貪って・・・ただただ、生きた、だけだった。
何も・・・残らない・・・生涯・・・

その時、初めて私は恐ろしいと思った。あまりの恐ろしさに震えて涙が出た。
その涙を見て、術師はおのが呪力に恐れをなしたと思ったらしいが、私が本当に恐れたことはたったひとつだった。

世界が私の名を呼ばないまま死ぬのはなんと恐ろしいことか。

剣が打ち下ろされる。術師がうるさく呪言を唱え続ける。
それを見ている里人が私に死ねと言っている。

『野狐を殺せ!』
『野狐を殺せ!』

犬が吠え、男は囃し立て、女は何やら甲高く喚いていた。

自分の生の終わりを予感し、私はこの時、生まれて初めて心の底から祈ったのだ。

・・・誰か・・・誰か・・・助けて!!
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