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天狐あやかし秘譚
第101章 純粋一途(じゅんすいいちず)
このときは、そんな日は絶対に来ないと思っていた。私とダリ様が離れ離れになることなどあり得ない、と。

しかし、その日はあっさりと訪れてしまったのだ。

西で興った力ある者たちの勢力が奥州にまで押し寄せてきた。
数の力が、武力が全てを制する時代が来たのだ。

力ある者たちにとって、ダリ様のような土地を統べる神、力漲る者は目障りであったに違いない。強い力を持つ術師や法力を持つ僧が幾人も山にやってきたのだった。

『佐那姫よ・・・里人を守れ』

ダリ様はおっしゃった。私はダリ様をお守りしたかったのだが、その命は絶対だった。私は里に、ダリ様は山に向かう。

そして、その山でダリ様は忽然と姿を消してしまったのだ。

異変を感じて私がそこに駆けつけたときには、腹を何かで貫かれ、虫の息となった碧音様が倒れているのみだった。私は碧音様を必死に介抱をしようとしたが、その時の私の妖力では、すでに常世に行きかけている彼女をお救いすることはできなかったのである。

血止めをし、体を温めようと必死に試みたが、その時までに失った血が多すぎた。
手遅れだったのだ。

唇から生気が失われ、肌は花が枯れるようにしおれていく。そんな碧音様が私の手を取ってかすれる声で言ったのだった。
『ダリ様をお探しして・・・彼の人は、必ず生きております。あと・・・』
そして、そこで力尽き、彼女の生命の火は消えてしまった。

私は、碧音様を守ることが・・・できなかったのだ。

ダリ様とのお約束を果たせなかった自身を恨み、恥じた。その場で三日三晩泣き腫らし、そして、四日目の朝、やっとのことで碧音様を弔うことができた。

ダリ様を失い、碧音様を失った私は、生きる目的すらも見失ってしまった。
呆然としたまま、ふらふらと里に降りていく。
私が降りていった頃、里はすでに都の者の手に落ちてしまっていた。新しく来た官吏が人々を数え上げ、税を取ろうと躍起になっていた。人員を数え上げている役人の前に並ぶ人たち、男、女、子・・・それをぼんやりと眺めていた私は、ある光景を見た。

あれは・・・?!

ダリ様をお祀りしていた社の宮司・・・つまりは碧音様の父だった。その手に赤子が抱かれている。遠目にそれは女の子のように見えた。
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