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天狐あやかし秘譚
第14章 暗雲低迷(あんうんていめい)
そして、まもなく陰陽寮陰陽部門に置かれている調査担当である『占部衆』が女怪の存在を突き止め、退魔の計画を立てることとなった。だが、女怪の存在に行きあった時も、退魔計画の樹立の際も、ここまでの大量発生は予期されていなかった。

実は、女怪の発生自体は有史以来、定期的に起こったことである。これは、陰陽寮暦部門が所蔵する大量の古文書からも裏付けられている。そして、女怪が発生する時は、大抵、恨みの連鎖の核となる怨霊がいて、それが自分と似た境遇の女を呪い殺し、自らの恨みの連鎖に取り込んでいくことが知られていた。

過去最大規模で女怪が膨れ上がったときの記録がある。室町時代の記録だ。その時には、都を中心に数千体の女怪が現れたと伝えられている。まさに呪的災害と言える規模の障りが生じ、大飢饉と同じクラスの死者を出したといわれている。それを教訓として、女怪が現れた際には、早めに祓うことが何よりも大事であるとされている。

女怪を祓うのに最も大切なこと。それは、その騒ぎの中心にいる女怪、大抵の場合それは最初の女怪なのであるが、それを特定し、真っ先に清めることである。

今回、土御門もこの原則に習い、怪異の中心、そこにいるはずの『始まりの女怪』を目指していた。
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