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天狐あやかし秘譚
第124章 二転三転(にてんさんてん)
「これは私の呪具・・・私は『星の水盤』と呼んでいます。私はこの水盤による遠見の占術を専門にしているんですよ。」
「なんだか沖津鏡に似てるね」
遠くのことを映し出す、という点では同じように聞こえる。しかし、御池は首を振った。

「あちらは光景をそのまま写し取ることができるようですが、私の術式ではそこまではできません」

御池によると、彼女の術式は遠く離れた場所の様子を水盤に写る星影から読み取ることができるのだという。ただ、逆に言えば、直接の光景ではないことから沖津鏡や辺津鏡のような『視覚』を媒介にする神宝の影響を受ける可能性も少ないらしい。

「では見ていてくださいね」

水盤の前に立った御池が両の手をそこにかざす。素人の私でさえもわかるほどの力が御池の身体を包みこんでいるのが見て取れた。

「四課三伝 天地水盤 日干五行 人事 地祇 天徳応神 星宿月将 式占八卦」

朗々と読み上げられる呪言に呼応するように、かざした御池の手のひらのあたりが、ボワッと白い光を放つ。その光が水盤を照らすと、そこに張られた水が自然と沸き立つように震え出した。その波は次第に整いだし、同心円状に広がる波となっていく。そして、しばらくすると不意に晴れた海のように凪いだ。

「わあ・・・」

思わず声が出る。その凪いだ水面にキラキラと星のような光が散らばっているのを見たからだ。とても不思議な光景である。まるで夜空を切り取ってそこにそっと浮かべたようにも見えた。思わず水盤の上を見たが、そこは簡易テントの屋根があるだけだ。つまり、あれは星空が映っているわけではないのである。

「これが御池家に伝わる占術・・・私の術式『月将水天占象』(げっしょうすいてんせんしょう)です。本来はかなり手間がかかる壬生神課を短時間かつ高い精度で行うことができるんですよ?」

そう言って御池が微笑んだ。どうやら、あの星の位置から出来事の吉兆や行く末、様子をうかがうらしい。

「ダリさんはそろそろ鞍馬山に入るようですね。・・・相手も、それなりの戦力を用意している・・・あれ?でも・・・これは・・・?」
御池の目が一瞬見開く。その後、もう一度水盤上の星を精査するように眺めていた。その身体がこころなしか小刻みに震えているように見えた。

「た・・・大変です!ダリさんが!!」
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