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天狐あやかし秘譚
第15章 進退両難(しんたいりょうなん)

☆☆☆
びーーーん
弓の弦が震える音が響いた。それが鳴り響いた瞬間、妖気の奔流が和らいだ。
びーーーん、びーーーん
ふたつ、みっつ・・・響くほどに妖気が薄らいでいく。
「よく・・・頑張りましたね。すいません。遅くなりました・・・。」
ふわりと、屋上に舞い降りる巫女服を着た女性。左手に大弓を持ち、彼女は敷島に優しく微笑んだ。
「ここまで押さえ続けたこと、見事です。明日香・・・」
その優しい声に、じわっと敷島は目に涙を浮かべる。
「あとは、任せてください」
そこに降り立ったのは、陰陽寮祭部衆最高の結界師にして、『丞の三位』の位階を持つ女性。
「私、大鹿島が、この名にかけて、この街を守ります!」
大鹿島雪影その人であった。
びーーーん、と大鹿島が大弓を弦打つ。弦打は妖魔を祓う最も古い術のひとつであり、大鹿島家に代々伝わる術式であった。
「発火せよ!」
声とともに、街の四方に大鹿島によって設置された特殊な火炎装置が火の柱を上げた。それはこのビルを囲み、3キロ四方を囲うように置かれていた。
大鹿島の得意とするのは火と弦打つ音を用いた複合結界術。
『朱雀鳴弦界法』
四方に篝火を焚き、その炎に弦打の音を乗せて一帯を強力に浄化する術式であった。
音が広がるとともに実体を持ちかけた女怪たちは存在を薄くし、動きを弱めていく。数万の妖魅をたった一人でほぼ無力化する。・・・一説によれば万葉の時代から続いているという名家大鹿島家当主という肩書と、『丞の三位』という位階に恥じぬだけの実力を持っていた。
「明日香、下に降りなさい。今、土御門様が核となる女怪を鎮めに行った。けれども、どういうわけか核がある位置から弾き飛ばされたようです。不測の事態があったのです。土御門様を補助なさい」
「わかりました」
「あなたもです、御九里、私はしばらくここを動けません。明日香を土御門様に会わせてください。明日香が感得し得た、結界内で起こったことについての情報を共有できるはずです。」
早く!と促され、二人は急いでビルの階段を駆け下りていった。
「頼みますよ・・・。この感じ・・・何かとても良くないことが起こっているようですから」
大鹿島は、妖気が黒々と立ち上るマンションをきっと見つめていた。
びーーーん
弓の弦が震える音が響いた。それが鳴り響いた瞬間、妖気の奔流が和らいだ。
びーーーん、びーーーん
ふたつ、みっつ・・・響くほどに妖気が薄らいでいく。
「よく・・・頑張りましたね。すいません。遅くなりました・・・。」
ふわりと、屋上に舞い降りる巫女服を着た女性。左手に大弓を持ち、彼女は敷島に優しく微笑んだ。
「ここまで押さえ続けたこと、見事です。明日香・・・」
その優しい声に、じわっと敷島は目に涙を浮かべる。
「あとは、任せてください」
そこに降り立ったのは、陰陽寮祭部衆最高の結界師にして、『丞の三位』の位階を持つ女性。
「私、大鹿島が、この名にかけて、この街を守ります!」
大鹿島雪影その人であった。
びーーーん、と大鹿島が大弓を弦打つ。弦打は妖魔を祓う最も古い術のひとつであり、大鹿島家に代々伝わる術式であった。
「発火せよ!」
声とともに、街の四方に大鹿島によって設置された特殊な火炎装置が火の柱を上げた。それはこのビルを囲み、3キロ四方を囲うように置かれていた。
大鹿島の得意とするのは火と弦打つ音を用いた複合結界術。
『朱雀鳴弦界法』
四方に篝火を焚き、その炎に弦打の音を乗せて一帯を強力に浄化する術式であった。
音が広がるとともに実体を持ちかけた女怪たちは存在を薄くし、動きを弱めていく。数万の妖魅をたった一人でほぼ無力化する。・・・一説によれば万葉の時代から続いているという名家大鹿島家当主という肩書と、『丞の三位』という位階に恥じぬだけの実力を持っていた。
「明日香、下に降りなさい。今、土御門様が核となる女怪を鎮めに行った。けれども、どういうわけか核がある位置から弾き飛ばされたようです。不測の事態があったのです。土御門様を補助なさい」
「わかりました」
「あなたもです、御九里、私はしばらくここを動けません。明日香を土御門様に会わせてください。明日香が感得し得た、結界内で起こったことについての情報を共有できるはずです。」
早く!と促され、二人は急いでビルの階段を駆け下りていった。
「頼みますよ・・・。この感じ・・・何かとても良くないことが起こっているようですから」
大鹿島は、妖気が黒々と立ち上るマンションをきっと見つめていた。

