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天狐あやかし秘譚
第16章 往事茫茫(おうじぼうぼう)
「ダリ、お腹・・・空いてないのかな」
「大丈夫です・・・。天狐様の周囲は時間が停まっていますので」
思わず出てしまった声に、律儀に瀬良が答えた。

「食事が終わりましたら、休んでください。もし、必要なら、近くに営業している銭湯があるので、お連れすることもできますが・・・?」
随分気を遣ってくれているようだ。ただ、私としては、あまりダリから離れたくない。清香ちゃんも1日くらいお風呂はいらなくても大丈夫だろう。芝三郎は・・・聞くまでもないか。
「お風呂は大丈夫です・・・。寝るところも、あるんですか?」

同じビルの違う階に休息を取るための部屋が設えてあり、さらにご丁寧に、その一角をちゃんと区切って私達が寝られるようにしてくれていた。貸布団だろうが、布団や寝間着まで用意してくれていた。

「こんなところで申し訳ありません」
瀬良が頭を下げるが、とんでもない。全然問題はない。
用意された寝間着を着て、横になる。ちょっと様子が違うので、寝付けないかと思ったが、そこはそれ、一日色々ありすぎたせいか、すっと眠気が訪れる。

女怪・・・。
男に恨みを持つ女の怪異。無限に増殖する怨嗟の鎖。
橋の下から湧き上がってきた、あのおぞましい姿・・・。

でも、一歩間違えば、私もそうなっていたかもしれない。そうならずに済んだのは・・・。
清香ちゃんがいるから、
芝三郎・・・も少しは役に立ってる・・・かも、
でも、何より、ダリがいたからだ。

守られた、来てくれた、
願いを聞いてくれて、
助けてくれた。

彼がいて、一人ではないと思えたから、色々頑張ろうと思えた。
私が、行って欲しいと言ったから・・・ダリは自分を犠牲にした?
いや、私を守ろうとしたのかもしれない。

土御門によれば、地獄の釜の蓋のようなもの、ということだった。
開けば近くにいる私も・・・と思ったのだろうか。

ダリが心配だ・・・。
私を呼んでこいって言ったの?どういうことだろう。
私・・・あなたの役に立てるのかな。

『誰かに守られたのは1000年振りだ』

そう言ったよね。もし、これまでの感謝をあなたに返せるなら・・・

ちゃんと、あなたのもとに、行くからね・・・。

この辺まで考えたことは覚えている。後は、夢の中。
私は、ゆっくりと、ゆっくりと深い眠りに落ちていった。
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