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天狐あやかし秘譚
第18章 【第5話 木霊】隋珠和璧(ずいしゅかへき)

☆☆☆
異界・・・。
ダリと一緒に行動するようになって、異界にのまれたのは、4回目、だっただろうか?
一回目は東北の曲がり神の住処に行った時、
二回目は芝三郎の化け比べに巻き込まれた時、
三回目は女怪を封じるべく、ダリが作った結界に入った時・・・。
ああ、そうか、ダリがお詫びに招待してくれた温泉も異界だったから、今回で5回目か・・・。
多すぎる。
異界はたいてい暗い。今回の異界も例に漏れず、真っ暗だった。ただ、目の前にどんと大きな樹が生えており、その樹が暗闇の中で黄金色に浮き立つように見えた。
樹は、けやきのように見えた。
大きく枝を伸ばし、青々とした葉が茂っている。
生命力にあふれる圧倒されるほど大きな樹だった。
「すごい・・・」
思わず私は見上げてしまう。
ひゅん・・・
視界の端を何かがよぎる。さっきと同じ影だ。
着物を着ている。
赤い・・・着物。
目で追おうとするが、視界の端から端に逃げてなかなか捉えることができない。
ひゅん、ひゅん
ひゅん、ひゅん
影は四方八方を飛び回る。普通に物理的に移動しているとしたらありえないような動きだ。そこはやはり異界の中、瞬間移動的な方法で動いているのかもしれない。
「ダリ!なにか・・・いるよ」
言うが、やはりダリには見えてない様子だ。キョロキョロと見回しているが、捉えている様子がない。捉えられないままに、ダリが槍を右手に顕現させる。
「祓うぞ・・・、綾音。どっちにいるか、教えてくれ」
わかった・・・。私は慎重にあたりに気を配る。
先程からあたりを凄まじいスピードで飛び回っており、目の端で捉えるのが精一杯だ。とてもじゃないけど、「ダリ、右!」などという暇がない。
そうは言っても、それでは埒が明かない。なんとかして捉えようと努める。
『壊さないで』
『壊さないで』
囁くような声が聞こえる。
何?どういうこと?
異界・・・。
ダリと一緒に行動するようになって、異界にのまれたのは、4回目、だっただろうか?
一回目は東北の曲がり神の住処に行った時、
二回目は芝三郎の化け比べに巻き込まれた時、
三回目は女怪を封じるべく、ダリが作った結界に入った時・・・。
ああ、そうか、ダリがお詫びに招待してくれた温泉も異界だったから、今回で5回目か・・・。
多すぎる。
異界はたいてい暗い。今回の異界も例に漏れず、真っ暗だった。ただ、目の前にどんと大きな樹が生えており、その樹が暗闇の中で黄金色に浮き立つように見えた。
樹は、けやきのように見えた。
大きく枝を伸ばし、青々とした葉が茂っている。
生命力にあふれる圧倒されるほど大きな樹だった。
「すごい・・・」
思わず私は見上げてしまう。
ひゅん・・・
視界の端を何かがよぎる。さっきと同じ影だ。
着物を着ている。
赤い・・・着物。
目で追おうとするが、視界の端から端に逃げてなかなか捉えることができない。
ひゅん、ひゅん
ひゅん、ひゅん
影は四方八方を飛び回る。普通に物理的に移動しているとしたらありえないような動きだ。そこはやはり異界の中、瞬間移動的な方法で動いているのかもしれない。
「ダリ!なにか・・・いるよ」
言うが、やはりダリには見えてない様子だ。キョロキョロと見回しているが、捉えている様子がない。捉えられないままに、ダリが槍を右手に顕現させる。
「祓うぞ・・・、綾音。どっちにいるか、教えてくれ」
わかった・・・。私は慎重にあたりに気を配る。
先程からあたりを凄まじいスピードで飛び回っており、目の端で捉えるのが精一杯だ。とてもじゃないけど、「ダリ、右!」などという暇がない。
そうは言っても、それでは埒が明かない。なんとかして捉えようと努める。
『壊さないで』
『壊さないで』
囁くような声が聞こえる。
何?どういうこと?

