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天狐あやかし秘譚
第18章 【第5話 木霊】隋珠和璧(ずいしゅかへき)

ダリは部屋の真ん中で落ち着き払っていた。時折、自分の方に向かってくる小物を手で叩き落としていた。
「ふむ・・・家鳴りか・・・」
そう一言いうと、右手で空中を払うような仕草をした。
瞬間、バチン!と大きな破裂音がし、ラップ音や物が動く怪異が、一気に鎮まった。
恐る恐る周囲を見ると、先程まで視界の端っこをヒュンヒュン飛び回っていた怪しい影も見られなくなっていた。
「だ・・・ダリ、なんか・・・いるの?ここ・・・」
恐る恐る顔を上げてダリに聞くが、ダリは考え込むような仕草をする。
「妙な・・・気配だな。あやかしではないようだ・・・。一応怪しい気配を祓ってはみたが、別に根源を断ち切ったわけではない。綾音には何かが見えていた・・・のか?」
確かに見えていた。ダリに見えなくて、なぜ私に見えたのかはわからないが、あれは・・・、まるで着物を着た女性のようだった。
『・・・ていけ・・・』
また!?
「ねえ、ダリ、今なにか聞こえたよね?」
「いや・・・我には聞こえぬ」
「確かに聞こえたんだけど・・・」
『出ていけ・・・』
やっぱり!
「出ていけって、言っている。やっぱりなにか、何かいるよ、ここ」
ふむ、とダリが考え込む。少し、周囲を見渡すと、ある一点を見つめた。和室に続く入口だ。
「異界が・・・あるな、綾音・・・」
言うやいなや、私の手を引いて、見つめる先に手をかざす。ダリの手の先の空間が裂け、漆黒の空が広がるように見えた。
何!?突然、どうするつもり!?
裂け目は見る間に広がり、私とダリを飲み込んでしまう。
「芝三郎殿、清香を頼むぞ」
完全に飲み込まれる寸前、ダリが芝三郎に言い放つ。それとともに、私達は異界にのまれ、芝三郎の『相分った』という返事も途中で途切れてしまった。
「ふむ・・・家鳴りか・・・」
そう一言いうと、右手で空中を払うような仕草をした。
瞬間、バチン!と大きな破裂音がし、ラップ音や物が動く怪異が、一気に鎮まった。
恐る恐る周囲を見ると、先程まで視界の端っこをヒュンヒュン飛び回っていた怪しい影も見られなくなっていた。
「だ・・・ダリ、なんか・・・いるの?ここ・・・」
恐る恐る顔を上げてダリに聞くが、ダリは考え込むような仕草をする。
「妙な・・・気配だな。あやかしではないようだ・・・。一応怪しい気配を祓ってはみたが、別に根源を断ち切ったわけではない。綾音には何かが見えていた・・・のか?」
確かに見えていた。ダリに見えなくて、なぜ私に見えたのかはわからないが、あれは・・・、まるで着物を着た女性のようだった。
『・・・ていけ・・・』
また!?
「ねえ、ダリ、今なにか聞こえたよね?」
「いや・・・我には聞こえぬ」
「確かに聞こえたんだけど・・・」
『出ていけ・・・』
やっぱり!
「出ていけって、言っている。やっぱりなにか、何かいるよ、ここ」
ふむ、とダリが考え込む。少し、周囲を見渡すと、ある一点を見つめた。和室に続く入口だ。
「異界が・・・あるな、綾音・・・」
言うやいなや、私の手を引いて、見つめる先に手をかざす。ダリの手の先の空間が裂け、漆黒の空が広がるように見えた。
何!?突然、どうするつもり!?
裂け目は見る間に広がり、私とダリを飲み込んでしまう。
「芝三郎殿、清香を頼むぞ」
完全に飲み込まれる寸前、ダリが芝三郎に言い放つ。それとともに、私達は異界にのまれ、芝三郎の『相分った』という返事も途中で途切れてしまった。

