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天狐あやかし秘譚
第21章 日常茶飯(にちじょうさはん)
☆☆☆
『綿貫亭の怪異を祓うこと』が実は私達に課せられていた入庁試験だったというのは後で知ったことだった。そして、遊就館での出来事により、見事に綿貫亭の怪異の源である木霊【桔梗】の回向に成功した私は、晴れて11月から宮内庁陰陽寮に正規職員として採用されることになった。

ただ、それとは別に、遊就館で『死』の概念を得て、もう二度と綿貫誠一に会うことが叶わないと悟った桔梗は綿貫亭に戻ってからもずっと泣き暮らした。それでも彼女は、私達がこの家に住むこと自体は許可してくれたため、私達は退去期限ギリギリで綿貫亭に引っ越すことができたのである。

私達が引っ越したあともしばらく、彼女は涙を流し続けた。

通常の妖怪と違い、神や精霊に近い彼女の姿は基本的には誰にも見えない。どういうわけか、私だけは例外なのだが、その理由は土御門を持ってしても『ようわからん』とのことだった。

ところが、最初は私にしか見えてなかった彼女の姿だが、そのうち、ダリや清香ちゃん、芝三郎にも見えるようになっていた。それについては、彼女自身の意志が関係しているようだ。彼女が意思を持って姿を見せようとすれば、それは可能である。でなければ、彼女は綿貫誠一とも出会えていないのだから。

こうして姿を見せるようになった彼女だが、当初は自分の本体である柱がある和室でふわふわ浮かびながらしくしく泣いているばかりだった。私はやっぱり気になるので、たまに彼女の様子を伺いに和室を訪れていた。まあ、行ったとしても、特に何を話すこともなく・・・というか出来ず、ただただ一緒に過ごしていただけだったのだが・・・。

彼女の、悲しい気持ちはとても良くわかるし、私には言えることがなかったからだ。

桔梗が嘆き悲しんでいる間に、宮内庁から資金援助を得て、庭の隅に彼女のための祠が作られた。しかし、それが出来ても彼女は結局、和室でふわふわしている事が多かった。

こんな生活が1週間ほど続いたあと、彼女が不意に私に話しかけてきた。

「人の子の暮らしを見るのが、好きでした」

その言葉を皮切りに、ぽつりぽつりと話をしてくれることが増えた。確かに彼女から感じたビジョンでも、彼女は獣や人の暮らしを見るのが好きなんだということが伝わってきていた。
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