この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第25章 毛骨悚然(もうこつしょうぜん)

「そうですね。彼はこの儀礼の意味も知っている。ホシガリ様が何であって、自分がこの後どういう運命をたどるかも承知しているのです。そして、輿入れ前は警戒が厳重だけど、輿入れ後なら助け出せるかもしれない、と知らせていたのだと思います」
「おい・・・行列が村を離れていくぞ」
蔵の屋根の上で隠形術で身を隠しながら葬列を見送っていたダリが声をかけてくる。
「追いましょう・・・あの行列を見失ったら、本家にたどり着けませんし、草介さんも救い出せません」
私、宝生前、ダリは、葬列を組む人々に気づかれないよう、大きく距離を取り、身を隠しながら、輿を追いかけ始めた。
☆☆☆
輿は村を出てから、山間の方に向かっていった。そして、複雑な山道をくねくねと登っていく。日はどんどんと傾いていき、あっという間に周囲は闇に閉ざされていく。
輿を先導する高灯籠の明かりのほか、数人が松明を灯して歩いていた。
松明の明かりをチロチロと揺らしながら、ゆっくりゆっくりと暗い山道を登っていく様は、先程よりも輪をかけて葬列の様相を強く見せた。
私と宝生前はあまり行列に近づかないように距離を取り、ささやかに揺れる明かりを頼りに後をつけていった。ダリは先程から狐神モードで、森の木々の間をぴょんぴょんと飛び跳ねながらついてくる。あちらのほうが彼にとっては移動しやすいらしい。
さすが、狐・・・。
幻想的とも言える行列が暗い山道を登っていく。そのさまは、まるで異界の入口に入り込んでいくかのようだ。黒装束の人々は無言でその闇に飲み込まれていく。
どこを歩いているのかもわからないまま、輿は右に左に複雑な山道を登っていった。
そして、とうとう左右に延々と広がる長い石壁にたどり着く。突き当たると、壁に沿って右に曲がり、その歩を進めていった。
「あれが・・・本家?」
だとしたら、相当広い敷地である。行列の明かりに照らされた石壁は延々と続いているように見える。壁は2m位あり、中をうかがい知ることも出来ない。
「おい・・・行列が村を離れていくぞ」
蔵の屋根の上で隠形術で身を隠しながら葬列を見送っていたダリが声をかけてくる。
「追いましょう・・・あの行列を見失ったら、本家にたどり着けませんし、草介さんも救い出せません」
私、宝生前、ダリは、葬列を組む人々に気づかれないよう、大きく距離を取り、身を隠しながら、輿を追いかけ始めた。
☆☆☆
輿は村を出てから、山間の方に向かっていった。そして、複雑な山道をくねくねと登っていく。日はどんどんと傾いていき、あっという間に周囲は闇に閉ざされていく。
輿を先導する高灯籠の明かりのほか、数人が松明を灯して歩いていた。
松明の明かりをチロチロと揺らしながら、ゆっくりゆっくりと暗い山道を登っていく様は、先程よりも輪をかけて葬列の様相を強く見せた。
私と宝生前はあまり行列に近づかないように距離を取り、ささやかに揺れる明かりを頼りに後をつけていった。ダリは先程から狐神モードで、森の木々の間をぴょんぴょんと飛び跳ねながらついてくる。あちらのほうが彼にとっては移動しやすいらしい。
さすが、狐・・・。
幻想的とも言える行列が暗い山道を登っていく。そのさまは、まるで異界の入口に入り込んでいくかのようだ。黒装束の人々は無言でその闇に飲み込まれていく。
どこを歩いているのかもわからないまま、輿は右に左に複雑な山道を登っていった。
そして、とうとう左右に延々と広がる長い石壁にたどり着く。突き当たると、壁に沿って右に曲がり、その歩を進めていった。
「あれが・・・本家?」
だとしたら、相当広い敷地である。行列の明かりに照らされた石壁は延々と続いているように見える。壁は2m位あり、中をうかがい知ることも出来ない。

