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天狐あやかし秘譚
第26章 往古来今(おうこらいこん)
☆☆☆
ふと気づくと、『私』は雨の降りしきる小道に佇んでいた。
早く追いかけなければならない。

美しい着物が濡れるのも構わず、私は冷たい雨の降る中走り続けた。
追いつけない・・・。

『領巾よ・・・生玉(いくたま)を!』

『私』は領巾に願う。どのようなものでも出すことができる不思議な領巾。たちまち『私』の手のひらに不思議な光を放つ勾玉が顕現する。

神宝・・・生玉(いくたま)・・・
この身に無限の命を湧き上がらせる神の宝のひとつ。

握りしめて祈ると足に力が漲る。これまでにない速さで疾風のごとく自分の身体が雨の道を駆け抜けるのを感じる。

見つけた・・・!

生玉により強められた目の力のおかげで、海子と一緒に馬で駆けている清延様を見つけた。

・・・どこまでも、どこまでも二人で行くというのか!
だが、そうはさせない・・・。『私』にはこの領巾がある。

浮内の家より授かりしこの領巾は、願えばどのようなものでも出すことができた。
生玉のごとく神宝も自在であった。

足玉(たるたま)により輝く美しさを
生玉により、若さと肉体の強さを手に入れた。
願えば金(くがね)も、銀(しろがね)も、意のままだった。

しかし・・・それなのに・・・

「なぜ!妾ではなく、海子を選ぶのだ!!!」

声を張り上げる。喉が裂けそうなほどあらん限りの力で叫んだ。
届け!届け!あの・・・愛しい人に!!

「待てえええ!!!」

一瞬、清延殿が後ろを振り返る。その目は恐怖に打ち震えたものだった。

なぜ逃げる・・・なぜ、妾のものにならない!
全てある、富も美しさも・・・すべてをあなたに与えられるのに!!

馬が峠を越えようとしている。いけない!早く連れ戻さねば!

「領巾よ!愛しい人を!ここに!!」

肩からかかっている領巾がぼうっと光った。
不可思議な風が、足元から舞い上がる。そのまま文字通り疾風の速度で、海子と清延様を追いかける。

「きゃああ!」
「うわあああ!」

上空高く、風に巻き上げられた二人の叫び声が耳に届く。
風はそのまま『私』の方に戻ってきた。
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