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天狐あやかし秘譚
第27章 銘肌鏤骨(めいきるこつ)
☆☆☆
左近次が来て、何日か経った。
やっと、御簾がなくても、彼は『私』を怖がることがなくなった。

最初に御簾をあげた時は、自分の体が震えるのを感じた。最初のときのように、まるで鬼を見るような目で見られたら・・・と思ってしまったのだ。

でも、そんなことはなかった。
怖くはないのか、と尋ねた。

「最初は驚きましたが、よく見ると、ホシガリ様のお顔は全然怖くはありません」

その言葉は『私』の心を救った。実は、『私』は今、自分がどのような顔をしているかを全く分かっていないのだ。ここには鏡なるものはなく、『私』が最後に見たのは、あの雨の日の夜に水鏡に映った醜い鬼のような顔だったのだ。

『今、妾はどのような顔をしておる?』
「はい・・・なにやら、泣きそうなお顔でございます」

その言葉で、『私』の袖のしがらみはあえなくほとび解けた。涙が頬を伝って落ち、声を上げて泣いてしまった。

直後、ふわりと、彼がその衣で包みこむように抱きしめてくれた。着物に焚きしめられた香の匂いと彼の体の温度が優しく染み込んでくる。

突然のことに『私』が身を固くすると、咄嗟に、彼は身を離した。
「も、申し訳ありません・・・その・・・つい・・・」

さっと離れ、平伏する。

「あまりにも悲しそうであったので・・・その・・・大変失礼いたしました」
怯えるように地に額づく姿を見て、また、『私』は絶望に陥りそうになる。行かないでほしい。ここにいてほしい・・・それだけなのだ。

『ならぬ・・・今一度・・・今一度・・・妾の近くに・・・』

手を伸ばす。左近次は恐る恐る顔を上げ、こちらを見た。『私』が伸ばした手を震えながら掴む。

『もう一度・・・抱いておくれ・・・』

彼をそっと引き寄せると、左近次は震える身体で抱きしめてくれた。それでもいい。それだっていい・・・。

『そのまま・・・そのままいてくだされ・・・』

彼に抱かれたまま、半刻ほど、涙を流し続けた。
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