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天狐あやかし秘譚
第28章 窮鳥入懐(きゅうちょうにゅうかい)
☆☆☆
屋敷の中に一番詳しい草介さんを先頭に、私を抱えたダリ、宝生前が続く。ホシガリ様の部屋から出たところで、少しずつ私は落ち着き出し、5つ目の部屋に来たあたりでやっとまともに立てるようになった。

「綾音、大丈夫か?あの妖魅の異界でなにかされたか?」
ダリが心配そうに私を見る。こういう時の彼の顔は本当に優しげだ。私は首を振った。別に、なにかひどいことをされたわけではない。

「異界の中で、私、ホシガリ様になっていたみたい」
そうして、ざっと異界で経験したことを話した。そして、逆に宝生前から草介さんから聞いたという『浮内家に伝わるホシガリ様の伝承』を聞いた。

「なるほど・・・。先程の草介さんの話は浮内家側の視点、綾音さんが体験したのは、ホシガリ様側の視点、ということですね。辻褄はあっています。」

だとすると、浮内の祖先はとてつもない外道である。

自分では使いたくない神宝『品々物之比礼(くさぐさのもののひれ)』を、嫉妬に狂う女性に使わせることで自らの家の繁栄に利用しようとしたということだ。しかも、おそらく、海子の姉が海子らを殺してしまい、自らを呪い、死ねなくなることまで計算して・・・ということだ。

「許せないよ・・・」

海子の姉も、嫉妬に駆られたのは良くなかったかもしれない。しかし、浮内の祖先が妙なことをしなければ、単なる愛憎劇で終わったはずだ。あそこまでの悲劇にはならなかったはずだし、いつか彼女も普通の結婚ができて幸せになったかもしれない。

「ダリ・・・なんとか、ならないのかな?」
無茶は承知だ。領巾の力は強大だ。ダリがあの槍で細切れにしても領巾を破壊するどころか、彼女を死なせてやることすら出来なかった。

でも・・・だったら、せめて・・・。

「ダリ、この屋敷を壊すことは?」
そう、ホシガリ様となった彼女は、この家の壁を破壊することが禁じられていた。浮内の人間や物を傷つけることを禁止されていたのだ。

「問題ない」

草介さんを見る。

「この屋敷を壊せば、少なくともホシガリ様を解放することができる。ここに1000年以上閉じ込められていたんだ。解き放ってあげたいよ。」
私は暗い屋敷の天井を見上げる。来る日も来る日も暗い闇に閉ざされた日々を思うと、そうしてあげたいと思ってしまう。
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