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天狐あやかし秘譚
第28章 窮鳥入懐(きゅうちょうにゅうかい)
一気に押し寄せてきた記憶に心と体が震える。
寒くてしょうがない。心が震えて、身体が崩れてしまいそうなほどの恐怖だ。

「お願い・・・お願い・・・やめて、やめて、やめてえええ!!!」

私は叫んでいた。磔になっているホシガリ様はついさっきまで『私』だった。永劫にも感じられた孤独の日々が幾重の苦痛の刃となって身体を突き抜けていく。

両の手で私は自分の体を抱きしめるようにして叫び続ける。
磔になったホシガリ様の叫びと私の叫びが調律の狂った楽器のような不協和音を撒き散らした。

ダリが、ぎゅっと私を抱きしめるが、それでも私の喉からは叫び声が溢れ出して止まらない。

「どうしたんです!綾音さん!ダリさん・・・!一体何が!」
「分からない・・・とにかく一旦退くぞ、宝生前!」

私を抱えたダリが部屋を飛び出した。その後を宝生前と草介さんがついてくる。
部屋の奥では、宝生前の術で磔になったホシガリ様が、なおも悲痛な叫び声を上げ続けていた。
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