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天狐あやかし秘譚
第3章 【第2話 獄門骸骨】夢幻泡影(むげんほうよう)
☆☆☆
主観的には、疾風。

風が私に一瞬まとわりついたかと思うと、あっという間に景色が変わる。公園の中央に移動していた。

え?

何が起こったか分からなかったが、とにかく助かった。はあ・・・と息を付く。そこで初めて気がついた。

後ろから、抱きしめられている。

「なんじゃ、こんなところで、妙なものに引っかかりおって」
後ろを見上げると、ダリの涼し気な顔があった。
抱きしめる腕が、温かいと不覚にも思ってしまった。

そのままダリは文字通り風のように私を小脇に抱えて公園を離れてくれた。私が今見たものの説明を求めると、色々と教えてくれる。

ダリの説明を要約すると、先程の女の子は、いわゆる『幽霊』なのだという。

「人に仇なすほどのモノでもない。じきに消える、泡沫のようなものだ」

人は強い思いを残すと、その場に魂が縛られるという。そうなると、『常世』、いわゆるあの世だが、に行かず、そこでただただ摩耗によって朽ちるのを待つような存在になる。

それが、私達が幽霊と呼ぶものだそうだ。
そして、大半の幽霊は何も悪さをしないで自然と消滅するらしい。

「大怨霊と呼ばれるような人に害をなすものはごく一部だ」

昔、ダリはそういった『怨霊』を退治したこともあるという。
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