この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第3章 【第2話 獄門骸骨】夢幻泡影(むげんほうよう)
「おとうさんか、おかあさんは?」

女の子は顔を伏せたまま黙って首をふる。
「おうちは近いの?」
なおも尋ねてみるが、女の子はふるふるとまた首を振るばかりだった。

うーん・・・困ったな。お巡りさんを呼んできたほうがいいのかな?
かと言って、この子をこのまま放置していくのも・・・。

110番をしようか?こんなことでしていいのかな?でも、それしかないか・・・。
「ちょっと、待っててね」
少し離れたところで電話しようと踵を返すと、ぐっと服の裾を掴まれた感触がある。振り返ると、先程の女の子が私の服を小さな手で掴んでいた。

困ったな・・・。

ここで、私は改めて彼女を見た。白いジャンパースカートに赤い模様・・・
いや、模様じゃ・・・ない?

え?!

よく見ると、模様と思ったのは飛び散った血だった。夕日に照らされていたので色味がよくわからないが、服の模様たるにはふさわしくない、赤黒い血の色だった。

気づいた瞬間、その子が顔を上げる。
「ひっ!」
思わず、声上げ、数歩後ずさる。

目が・・・なかった。
目があるべきところには眼球がえぐれ、ポッカリと穴が空いている。
右の頬は不自然に腫れ上がり、痛々しかった。
よく見ると両の耳からは血がダラダラと流れ、顎から下に滴っていた。

「あう・・・ぐあ・・い・・」

何か口に出して言おうとしているが、言葉にならない。少し開いた口の中には歯がなかった。まるですべての歯を引き抜かれているようだった。

明らかに、この世の者ではない、何か。
先日の曲がり神を見たときと同じような衝撃を受ける。

と、とにかく離れなきゃ・・・。
思うのだが、足がうまく動かない。恐怖で足がすくんでいる。

があ・・・うぐぅ・・

声にならない呻きのようなものをあげ、女の子がベンチから立ち上がり、ゆっくりこっちに歩いてくる。腕を伸ばし、まるで何かを求めるように、フラフラと近づいてきた。

逃げなきゃ・・・思うが、ガタガタと足が震えて力が入らない。何となれば腰が抜けそうだ。
先程から、子供のようなその『何か』は口をもぐもぐさせながら、声を発している。

「あぐぅ・・・いた・・ぐあ・・・」

その子の手が私に触れんばかりになる。

た・・・助けて・・・助けて・・・!

「ダリ!!!!」

私は何故か、あの天狐の名を大声で叫んでいた。
/183ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ