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天狐あやかし秘譚
第28章 窮鳥入懐(きゅうちょうにゅうかい)
「帰ったら・・・今度こそ、まぐわおうぞ・・・約束・・・してくれるか?」

はい?

一瞬、意味がわからなかったが、私の左脳がその言葉の意味することを分析し、情緒を司る右脳に情報の発信を終えると、私の顔は爆発的に紅潮した。

「な!何言ってるのよ!!!」

こんなときに!みんなピンチじゃん!

実際、先ほど来、ダリには間断なくホシガリ様の容赦ない斬撃が繰り返され、彼はそれをさばくので精一杯の様子だ。加えて、圭介が連れてきた男たちが拳銃をバンバン撃っている。ダリが結界のようなものを張っているので私達にはかろうじて当たらないが、それにしたって、いつまで保つかわからない。

宝生前も石釘の結界を駆使してなんとか凌いでおり、おそらく土の術式で相手を無力化する機会を伺っている状態だ。

みんな、命が危ないっつーの!

「どうなのだ!綾音!」
「い・・・今それ大事なの!?」

しかも、この男ばかりのところで、事が終わったらセッ・・・エッチさせろと言い、私にその承諾を求めるって、どんだけデリカシーないのよ!!

し・・・しかも、私、初体験なんですけど!!!

そんな私の乙女の葛藤を尻目に、戦況は悪くなっていく。とにかくホシガリ様の力が強すぎる。振りかぶった腕を下ろすだけで固い木の床がまるでクッキーか何かのようにあっけなく砕けていく。

戦っている部屋もそれほど広くないために、ダリも身をかわしたりするのが難しいようだ。先程からいなしきれない攻撃で、衣服が破れ、若干血も滲んでいる。

「綾音さん!早く答えてあげてください」
宝生前まで!
「綾音さん・・・よくわからないけど、大事なことなのでは?」
え?草介さんも!?

ええい!分かったわよ!もうこうなりゃ自棄よ!

「ダリ!分かったわ!これが終わったら、たっぷり抱かせてあげる!だから・・・だから・・・あんな奴ら、やっつけちゃって!」

ダリがにやりと笑ったのが分かった。

「契ったぞ・・・綾音・・・!」
槍の穂先が鈍く光りだす。
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