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天狐あやかし秘譚
第29章 正真正銘(しょうしんしょうめい)
☆☆☆
綾音たちが圭介と死闘を繰り広げているころ、宝生前は例の土饅頭の間にたどり着いていた。

ダリさんの術、大雑把に見えて存外繊細のようですね・・・。私は見回して思った。なぜなら、土饅頭の間の天井や壁はきれいに破壊されているが、墓そのものには破壊の痕跡は見られないからだ。同じく、ここに来るまでに通ってきたところに倒れていた圭介の部下たちにも致命的な被害はないようだ。

さて・・・

墓を見渡す。ざっと50以上はあるこの墓から、左近次とやらの墓を見つけるのが一苦労・・・、いや・・・あれか・・・。

目指すべき墓はすぐに分かった。
他の墓よりも一段大きく、そして、最奥に位置していた。そして、そこにだけ、綺麗な花が供えられていた。

本当に・・・愛していたんですね。

墓に寄り、私は地面に方陣を描く。本来、死者の口寄せは数日の儀式を要する大きな術式だ。それをこんなに短時間でやるというのは、私自身も経験がない。しかも、呼び出そうという魂も1000年以上前のもの・・・。

よほど強い思いが残っていなければ、失敗する可能性のほうが高い。

だけど・・・あなたに賭けるしかないんですよ・・・左近次さん。

土の方陣の前に跪き、魂呼せの呪言を奏上する。

「玉かぎる ただひと目なりとて ここに送らめ
 ぬばたまの 夜々に眠りし その玉の緒を」

術式も呪具も略式・・・。頼む・・・応えてくれ・・・。

ぼうと青白い炎が方陣の中央に立ち上る。それは幽かにゆらぎ、震えだす。
あまりにも儚い光で、今にも吹き消えてしまいそうだった。

「左近次さん・・・」

呼びかけると、ぼうと炎が揺らぐ。一応繋がりはした。
第1段階はクリアだ。

「左近次さん・・・あなたをお呼びしたのは私です。私の頼みを聞いていただきたい。」

契を結ぶ・・・第2段階。
炎が戸惑うように揺れた。時間がないから・・・急ぐぞ。

「貴方がたがホシガリ様と呼んでいる者・・・あの方の真の名、真名を・・・あなたは知っていますよね?」

ゆらゆらと揺れ動く。反応はあるが、言葉は出てこない。何か、葛藤しているのか?確かに、家の命運を背負って生贄になったのだ。その家を傾かせるような情報は・・・出さないということか?
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