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天狐あやかし秘譚
第32章 【第8話 市民の木】一意専心(いちいせんしん)

お昼を食べる時間を考えても、あと1時間くらいはのんびりしてても問題ない。土御門様か清香ちゃんが飽きるまでゆっくり待っていることにしようか。
私はベンチに座り、空を見る。
見事な冬の晴天だ。ここのところで急に東京も寒くなってきた。息が白く、というほどではないが、じっとしていると身体に冷気が沁み込んでくるような気がする。
『あの・・・瀬良さん?』
お腹の中で声がする。桔梗だ。
なあに?と心の中で問い返す。
『あの、木の側に行きたいのですが・・・』
え?
あの木、というのはとりも直さず、例の老婆が死守しようとしている老木のことだろう。今、あそこに行くわけにはいかないの、と言ってみる。
その刹那、私の身体を奇妙な落下感が襲う。まるで、地面を透かして、ヒュンと地球の中心に向かって落ちていくような、そんな感覚だ。
何!?
思う間もなく、私の意識は闇に呑まれる。最後の一瞬、『ごめんなさい』という桔梗の声が闇の底から響いたような気がした。
私はベンチに座り、空を見る。
見事な冬の晴天だ。ここのところで急に東京も寒くなってきた。息が白く、というほどではないが、じっとしていると身体に冷気が沁み込んでくるような気がする。
『あの・・・瀬良さん?』
お腹の中で声がする。桔梗だ。
なあに?と心の中で問い返す。
『あの、木の側に行きたいのですが・・・』
え?
あの木、というのはとりも直さず、例の老婆が死守しようとしている老木のことだろう。今、あそこに行くわけにはいかないの、と言ってみる。
その刹那、私の身体を奇妙な落下感が襲う。まるで、地面を透かして、ヒュンと地球の中心に向かって落ちていくような、そんな感覚だ。
何!?
思う間もなく、私の意識は闇に呑まれる。最後の一瞬、『ごめんなさい』という桔梗の声が闇の底から響いたような気がした。

