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天狐あやかし秘譚
第32章 【第8話 市民の木】一意専心(いちいせんしん)

☆☆☆
私はずっと、ここに住んでいるんだよ。今年で75になるからね。昭和の時代からずっとさ。
あの木はね、私のばあちゃんの時代にもあったって言うから、そりゃあ随分立派なもんだよ。
うちの両親はこの近くで自動車の修理工場をやってたんだよ。小さな工場さ。私には兄弟が5人いてね、兄さんが2人、姉さんが1人、弟が1人だ。この二人目の兄さん、健二ってんだけど、それがすごい人でさ、勉強もなーんでもできるんだよ。私はからっきしだったね。
今でこそ、こんなんだけど、小さい頃は結構、弱気でさ。学校でいじめられんだよ。そんなんでさ、学校では友達出来なかったから、家に帰ってもつまらねえ。そうすると、いつもあの木のある広場に行ってさ、木の上に登って空を見てた。あの木、登りやすくはない形だろ?だから、当時はあれに登ろうなんて変わり者は私だけだった。
あの木が、私の居場所だったんだ。
え?ああ、そうか、神様の話だっけか?
私が神様に初めて会ったのは、確か小学校1年生の時だった。小学校、慣れなくてね。行きたくなくて、よく泣いていた。二番目の兄ちゃんは少し優しかったから、よく私を学校に連れて行ってくれたけど、どうしても我慢できない時は勝手に授業抜け出してあの木に登っていた。
今やったら、相当問題児だっただろうよ。まあ、当時でも、問題児だったけどさ。
それで、ある日、木の上にいたら、先生が探しに来たんだ。見つかったら怒られる!と思って木にしがみついて、見つかりませんように、ってお祈りしていた。それで、ちらちら先生の方を見ていたんだけど、そのとき、先生がはっきりと私の方を見るんだ。
ああ、こりゃ見つかった・・・。
そう思ったんだけどね。不思議なことに、先生はそのまま行っちまった。ほっとして木の枝に座り直すと、隣に、知らない男の子が座っていたんだ。
薄水色のシャツに、茶色の半ズボン。
おかっぱぽい髪型で、顔がえらく綺麗だった。
急にいたもんだから、私はびっくりしちまって、『わああ!』って叫んで、それで木からおっこっちまって。真っ逆さまになったところまでは覚えてんだけど、そこで気を失った。
それでどうなったかって?
私はずっと、ここに住んでいるんだよ。今年で75になるからね。昭和の時代からずっとさ。
あの木はね、私のばあちゃんの時代にもあったって言うから、そりゃあ随分立派なもんだよ。
うちの両親はこの近くで自動車の修理工場をやってたんだよ。小さな工場さ。私には兄弟が5人いてね、兄さんが2人、姉さんが1人、弟が1人だ。この二人目の兄さん、健二ってんだけど、それがすごい人でさ、勉強もなーんでもできるんだよ。私はからっきしだったね。
今でこそ、こんなんだけど、小さい頃は結構、弱気でさ。学校でいじめられんだよ。そんなんでさ、学校では友達出来なかったから、家に帰ってもつまらねえ。そうすると、いつもあの木のある広場に行ってさ、木の上に登って空を見てた。あの木、登りやすくはない形だろ?だから、当時はあれに登ろうなんて変わり者は私だけだった。
あの木が、私の居場所だったんだ。
え?ああ、そうか、神様の話だっけか?
私が神様に初めて会ったのは、確か小学校1年生の時だった。小学校、慣れなくてね。行きたくなくて、よく泣いていた。二番目の兄ちゃんは少し優しかったから、よく私を学校に連れて行ってくれたけど、どうしても我慢できない時は勝手に授業抜け出してあの木に登っていた。
今やったら、相当問題児だっただろうよ。まあ、当時でも、問題児だったけどさ。
それで、ある日、木の上にいたら、先生が探しに来たんだ。見つかったら怒られる!と思って木にしがみついて、見つかりませんように、ってお祈りしていた。それで、ちらちら先生の方を見ていたんだけど、そのとき、先生がはっきりと私の方を見るんだ。
ああ、こりゃ見つかった・・・。
そう思ったんだけどね。不思議なことに、先生はそのまま行っちまった。ほっとして木の枝に座り直すと、隣に、知らない男の子が座っていたんだ。
薄水色のシャツに、茶色の半ズボン。
おかっぱぽい髪型で、顔がえらく綺麗だった。
急にいたもんだから、私はびっくりしちまって、『わああ!』って叫んで、それで木からおっこっちまって。真っ逆さまになったところまでは覚えてんだけど、そこで気を失った。
それでどうなったかって?

