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天狐あやかし秘譚
第32章 【第8話 市民の木】一意専心(いちいせんしん)
その時、都会から転校してきた女の子がいて、その子がとんでもないいじめっ子で、クラスで一番気弱だった私に目をつけていじめてくるんだ。その子は仲間作りがうまくてね。私はすぐにクラス中の女子から孤立させられて、あっという間に一人ぼっち。

今ほど大人もいじめに敏感じゃなくて、子ども同士の小競り合いと放っておかれた。そうなると、行くとこはひとつしかないな。あの木の下だ。

5年生になっていたから、1年生のときに遊んだ神様のことは正直忘れかけていたよ。だから、あの子に会いに行ったと言うよりは、一人になりたくて木に登っていたんだと思う。

木の上でボロボロ涙を流していたよ。
日が暮れるまで。小学生が広場からいなくなるまで。枝葉が私を隠してくれていたからね。こっちからは友達の姿が見えるけど、あっちからはよく見えない。絶好の隠れ家さ。だから、寂しい私にはちょうどよかった。

寂しくてぼろぼろ泣いていたら、下から声がしたよ。

『泣くなよ』

私と同じくらいの年格好。そして、薄水色のシャツに茶色の半ズボンだった。
その姿を見た時、昔会った『神様』のことを思い出したのさ。

結局5年生の1年間、その男の子が私の支えだった。
学校でいじめられても、我慢して、我慢して、放課後はずっと木の上で過ごした。
その男の子が、私の隣りに座っていてくれたから頑張れた。

この関係は私が中学校に入って、それから商業高校に入っても続いた。
私の成長に合わせて、その子も大きくなっていったよ。

もちろん、私だってずっと木に登ってたわけではなく、友達と遊んだりもしたよ。でも、嫌なことがあったり、辛いことがあると、決まって向かうのはあの木の上だった。そして、私が行くと、たいてい後からあの子が来て、私の横にちょんと座って話を聞いてくれた。

だから、最初は『神様』なんて思っていたけど、結局は住んでるところはわからないけど、人間だと思っていた。

好きだったのかって?
・・・うーん。難しいね。恋愛だったかと言われれば違ったように思う。
安心できる場所、ってのが一番近かったかな?

まあ、そういう意味では、あの人は『神様』みたいなものだったのかもね。
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