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天狐あやかし秘譚
第36章 雪月風花(せつげつふうか)
☆☆☆
駅前のスーパーに4人でぞろぞろと出向き、歳末の賑やかさの中、必要な買い物を済ませる。ついでに、パティスリーに寄り、ケーキを物色。ショーケースの前で芝三郎と清香ちゃんの目がハートになってしまっていた。

「おおおっ!」
「ふわわああああ!」

言われてみれば、この二人、実物のケーキを見たことがない・・・かもしれない。ふふふ・・・。予想通り、喜んでる、喜んでる・・・
ダリはどうだろう?ダリの生きていた時代には当然なかった食べ物だろう。どう思っているのかな?

おいしそう・・・とか思ってるのかな?

ちらっと横目で見ると、ケーキを凝視していた。その表情からでは、どう思っているかわからないな・・・と思っていたのだが・・・。

「っ!ダリ!尻尾!尻尾!!」

尻尾がぴるん、ぴるんとおしりの上で跳ねている!
私は慌ててダリに尻尾をしまうように言い、あたりを見回す。幸運なことに、周囲にいた客たちは、皆ショーケースの方に気を取られていたので、こちらに注目している人はいなかったようだ。ほっと胸を撫で下ろした。

尻尾、出ちゃうほど、おいしそうって思ったんだ・・・。

改めてそう思うと、くすっと思えてきてしまった。
よし!奮発して、大きめのホール買っちゃうよ!

装飾品、食料品の買い出しの後は、いよいよパーティの準備である。お昼ごはんは買い出しのついでに買ったサンドイッチやおにぎりで軽く済ませてしまっていた。

ここで予定通り、連絡をしておいた陰陽寮の方々が到着する。来てくれたメンバーは土門さん、宝生前、それから御九里だった。

さて、ここからは役割分担・・・。

「えっと、芝三郎とダリ、御九里は土門さんの指示の元、お部屋の飾り付けよ!宝生前さんと清香ちゃん、私は調理班!いいわね?」
若干、御九里が嫌な顔をしたが、無視だ。意外なことに、土門さんは乗り気だった。
「飾りつけですね!!わかりました!この私のセンス、遺憾なく発揮させていただきます!!」

土門さんは相変わらず、不思議な出で立ちをしている。薄青色の貫頭衣には金糸で複雑な模様が編み込まれている。その下にはたっぷりとしたオフホワイトのロングスカートのような服を身につけていた。髪の毛が紫がかっており、アイシャドーの濃いめの紫と相まって不思議な雰囲気を出していた。

このセンスで飾り付けか・・・。ま、いいか。
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