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天狐あやかし秘譚
第4章 霖雨蒼生(りんうそうせい)

☆☆☆
「清香ちゃんは、悪くないよ」
綾音が魂に話しかけている。
あの娘は一体何をしているのだ。無駄なことだ・・・。魂はそこに焼き付き、ただただ己の未練を繰り返し繰り返し、糸車のように反芻するだけだ。
現し世に削られ、冤鬼に落ち、霧散する。
何か返答が得られることは・・・ない。忠告をしたはずだ。
「ママを守れなかったことで、自分を責めないで」
綾音が涙を流している。なぜ?
すでに死した、しかも、己とは無縁の者のために、なぜあのような顔をするのだ?
しかし、その後の光景に目を疑った。
綾音が子の魂の頭に手を置く。そっと慈しむようになぜる。
その一瞬、魂はゆらりとその姿を揺らし、そして、変わった。
ほんの一時だが、確かに生前の姿を取り戻していた。
2000年以上生き、西方より帰朝した徳の高い坊主も何人も見てきたが、あのようなことを成したのは数例しか見たことがない。そのようなことが、できるものだろうか?
昨日の様子もあって気にかかっていたので、公園の樹の陰から綾音を見ていた。でも、もしかしたら、綾音なら・・・問題ないのかもしれない。
なにやら、確信をすると、おせっかいな天狐は、ふわりと木の陰から姿を消した。
日が傾き、夜になる。
綾音は、「また来るね」と言い残し、公園のベンチをあとにした。
「清香ちゃんは、悪くないよ」
綾音が魂に話しかけている。
あの娘は一体何をしているのだ。無駄なことだ・・・。魂はそこに焼き付き、ただただ己の未練を繰り返し繰り返し、糸車のように反芻するだけだ。
現し世に削られ、冤鬼に落ち、霧散する。
何か返答が得られることは・・・ない。忠告をしたはずだ。
「ママを守れなかったことで、自分を責めないで」
綾音が涙を流している。なぜ?
すでに死した、しかも、己とは無縁の者のために、なぜあのような顔をするのだ?
しかし、その後の光景に目を疑った。
綾音が子の魂の頭に手を置く。そっと慈しむようになぜる。
その一瞬、魂はゆらりとその姿を揺らし、そして、変わった。
ほんの一時だが、確かに生前の姿を取り戻していた。
2000年以上生き、西方より帰朝した徳の高い坊主も何人も見てきたが、あのようなことを成したのは数例しか見たことがない。そのようなことが、できるものだろうか?
昨日の様子もあって気にかかっていたので、公園の樹の陰から綾音を見ていた。でも、もしかしたら、綾音なら・・・問題ないのかもしれない。
なにやら、確信をすると、おせっかいな天狐は、ふわりと木の陰から姿を消した。
日が傾き、夜になる。
綾音は、「また来るね」と言い残し、公園のベンチをあとにした。

