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天狐あやかし秘譚
第40章 一殺多生(いっさつたしょう)

瀬良はそのまま、テキパキと麻縄で男の身体を拘束する。うまく結ばないとうっ血してしまうということで、なかなかにテクニックが要るようだが、無事に拘束できたようだった。土御門の一撃はよほど強力であったと見え、瀬良が縛り上げている間も目を覚ます気配はまったくない。
フェーズ?と私の頭に疑問符が浮かんでいるのが見えたのだろう。土御門が説明をしてくれた。
「フェーズ、ちゅーのは、赤咬病の患者の病態の進み方を便宜的に表現したもんや。
フェーズ1が発熱段階。このときは風邪やインフルみたいな症状が出て、身体だるなって寝込んでまう。
フェーズ2が発情段階。性欲が異常に亢進して異性を襲ったり、セックスばっかするようになる。
そしてフェーズ3は渇望段階。いくら交わっても満足いくことがなく、無限の精力であたり構わず、異性だろうが同性だろうが無差別に人を襲って犯すようになる。
フェーズ2でも理性はだいぶ怪しいが、3はこれこのとおり、理性はぶっ飛んでまう。ついでに膂力も強なって、身体の耐久性も上がる。ゾンビ映画に出てくるゾンビみたいになるな。
そして、最後はフェーズ4、衰弱段階。フェーズ3で無理やり絞り出した体中のエネルギーが枯渇してもうて、身体機能が低下、ついには衰弱死・・・というわけや。」
土御門が足の先で、縛り上げられた男を軽く蹴飛ばす。
「聞いてて分かった思うけど、周囲の人が一番危険に晒されるのはフェーズ3、そして、本人が危険にさらされるのがフェーズ4や。文献によれば、フェーズ3に移行するのは普通は1か月以上かかるっちゅうことやったんや・・・進行、早いな・・・」
土御門が首を傾げる。
「疱瘡神がいるせいかもしれないですね」
「せやな」
疱瘡神がいることで、病気の進行が村全体で早くなっている可能性があるというのだ。それは、当初考えていたよりも、中類村の住人の命のタイムリミットが近いということを意味する。
「まあとにかく、早く名越のとこに・・・」
皆まで言う前に土御門が口を閉ざす。すっと目を細めて周囲を伺う。体に緊張感が走っているように見える。
ダリも宙空を見上げていた。
私も周囲を窺うが、特になにか変わったことは感じな・・・
ガサガサガサ・・・
フェーズ?と私の頭に疑問符が浮かんでいるのが見えたのだろう。土御門が説明をしてくれた。
「フェーズ、ちゅーのは、赤咬病の患者の病態の進み方を便宜的に表現したもんや。
フェーズ1が発熱段階。このときは風邪やインフルみたいな症状が出て、身体だるなって寝込んでまう。
フェーズ2が発情段階。性欲が異常に亢進して異性を襲ったり、セックスばっかするようになる。
そしてフェーズ3は渇望段階。いくら交わっても満足いくことがなく、無限の精力であたり構わず、異性だろうが同性だろうが無差別に人を襲って犯すようになる。
フェーズ2でも理性はだいぶ怪しいが、3はこれこのとおり、理性はぶっ飛んでまう。ついでに膂力も強なって、身体の耐久性も上がる。ゾンビ映画に出てくるゾンビみたいになるな。
そして、最後はフェーズ4、衰弱段階。フェーズ3で無理やり絞り出した体中のエネルギーが枯渇してもうて、身体機能が低下、ついには衰弱死・・・というわけや。」
土御門が足の先で、縛り上げられた男を軽く蹴飛ばす。
「聞いてて分かった思うけど、周囲の人が一番危険に晒されるのはフェーズ3、そして、本人が危険にさらされるのがフェーズ4や。文献によれば、フェーズ3に移行するのは普通は1か月以上かかるっちゅうことやったんや・・・進行、早いな・・・」
土御門が首を傾げる。
「疱瘡神がいるせいかもしれないですね」
「せやな」
疱瘡神がいることで、病気の進行が村全体で早くなっている可能性があるというのだ。それは、当初考えていたよりも、中類村の住人の命のタイムリミットが近いということを意味する。
「まあとにかく、早く名越のとこに・・・」
皆まで言う前に土御門が口を閉ざす。すっと目を細めて周囲を伺う。体に緊張感が走っているように見える。
ダリも宙空を見上げていた。
私も周囲を窺うが、特になにか変わったことは感じな・・・
ガサガサガサ・・・

