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天狐あやかし秘譚
第40章 一殺多生(いっさつたしょう)

☆☆☆
「ん?なんやあれ?」
前を行く土御門がボソリと呟いた。私達が中類村の入口にある道祖神を過ぎたあたりでのことだった。
峠を降りるまではダリに背負ってもらっていたが、ずっとこのままではいられない、というのと、先程の検問で他の人の目に晒されてちょっとはしゃっきりしたのもあって、私はこの時点ではなんとかひとりで歩いていた。
瀬良の後ろからひょいと前の方を見やる。
土御門が見ている先、村道から少し右に外れた森のポッカリと開いた空き地に、ひとりの人がうずくまっていた。
死んでいるのかも、とも思い、皆で慎重に近づいていった。
ある程度まで近寄ると、背中がプルプルと震えているのが見て取れる。どうやら死んでいるわけではないようだ。
「具合が、悪いのかもしれません」
瀬良が駆け寄ろうとするのを土御門が手で制する。
「あかん、近寄りなや」
同時にダリが私の前に立ちふさがる。
「・・・な・・・女・・・」
うずくまっている人・・・男が突然声を上げた。カタカタと体が震えたかと思うと、ゆらゆらと身体を揺らしながらまるで亡霊のように立ち上がる。
年の頃は20代後半くらいだろうか?割と背が高く、ガッシリとした筋肉質の体をしている。その目はギラギラと異常な光を放ち、口元からはよだれが流れ、糸を引いて地面に幾筋も落ちていっていた。そして、ズボンの前は開けており、下着も身につけていない。なので、そそり勃つ陰茎が丸見えになっていた。赤黒く怒張したペニスの先は口元のよだれと同じくらいタラタラ溢れる粘液でドロドロになっていた。
「な!?」
ダリの背の後ろで私は思わず声を上げてしまう。
「なんや、祭部の奴ら、フェーズ2やなんて・・・。ありゃ3まで行っとるがな」
土御門が手刀を構えるのと、その異様な男が跳躍するのはほぼ同時だった。
「よこせぇえ!!!」
獣のような叫び声を上げ躍りかかる男の身体をひらりと躱し、その勢いのまま身体を半回転させる。そして、背後から構えた手刀を男の後頭部に叩き込む。
「があっ!」
土御門に必殺の一撃を叩き込まれ、たまらず男は昏倒した。可哀想に、白目を剥いて、口元からはぶくぶくと泡を吹いていた。
「一体・・・何?」
「赤咬病の患者です・・・。すでにフェーズ3に入っている人がいるようです」
私の呟きに瀬良が応えた。
「ん?なんやあれ?」
前を行く土御門がボソリと呟いた。私達が中類村の入口にある道祖神を過ぎたあたりでのことだった。
峠を降りるまではダリに背負ってもらっていたが、ずっとこのままではいられない、というのと、先程の検問で他の人の目に晒されてちょっとはしゃっきりしたのもあって、私はこの時点ではなんとかひとりで歩いていた。
瀬良の後ろからひょいと前の方を見やる。
土御門が見ている先、村道から少し右に外れた森のポッカリと開いた空き地に、ひとりの人がうずくまっていた。
死んでいるのかも、とも思い、皆で慎重に近づいていった。
ある程度まで近寄ると、背中がプルプルと震えているのが見て取れる。どうやら死んでいるわけではないようだ。
「具合が、悪いのかもしれません」
瀬良が駆け寄ろうとするのを土御門が手で制する。
「あかん、近寄りなや」
同時にダリが私の前に立ちふさがる。
「・・・な・・・女・・・」
うずくまっている人・・・男が突然声を上げた。カタカタと体が震えたかと思うと、ゆらゆらと身体を揺らしながらまるで亡霊のように立ち上がる。
年の頃は20代後半くらいだろうか?割と背が高く、ガッシリとした筋肉質の体をしている。その目はギラギラと異常な光を放ち、口元からはよだれが流れ、糸を引いて地面に幾筋も落ちていっていた。そして、ズボンの前は開けており、下着も身につけていない。なので、そそり勃つ陰茎が丸見えになっていた。赤黒く怒張したペニスの先は口元のよだれと同じくらいタラタラ溢れる粘液でドロドロになっていた。
「な!?」
ダリの背の後ろで私は思わず声を上げてしまう。
「なんや、祭部の奴ら、フェーズ2やなんて・・・。ありゃ3まで行っとるがな」
土御門が手刀を構えるのと、その異様な男が跳躍するのはほぼ同時だった。
「よこせぇえ!!!」
獣のような叫び声を上げ躍りかかる男の身体をひらりと躱し、その勢いのまま身体を半回転させる。そして、背後から構えた手刀を男の後頭部に叩き込む。
「があっ!」
土御門に必殺の一撃を叩き込まれ、たまらず男は昏倒した。可哀想に、白目を剥いて、口元からはぶくぶくと泡を吹いていた。
「一体・・・何?」
「赤咬病の患者です・・・。すでにフェーズ3に入っている人がいるようです」
私の呟きに瀬良が応えた。

