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天狐あやかし秘譚
第41章 狂瀾怒濤(きょうらんどとう)

今度はシラクモが驚く番だった。自分が放った虫たちがこうも簡単に無効化された経験は彼にはなかったのだ。舌打ちをして、両の手のひらを広げ、それを身体の前に突き出す。手掌の前には黒く空間が穿たれ、そこから無数の虫たちが湧き出す。虫たちは幾百層の壁となり、土御門の斬撃を無効化した。
はあ、はあ、はあ・・・
かなり、無理をした、とシラクモは思った。
十分な気の熟成を待たず、領巾の力を無理矢理に引き出したため体に結構な反動を感じる。このまま戦い続けるのは得策ではない。
ただ、それは向こうの術者、土御門も同様のようだった。
シラクモが使う神宝『蜂肩巾』(はちのひれ)が放つ虫たちを一瞬で払いのけるだけの力を神剣から引き出したことで、同じく反作用をその身に感じていた。
「手伝え!イタツキ!!」
シラクモが颯馬の方を振り返り、彼の名・・・シラクモにとって、彼は颯馬ではなく、『イタツキ』なのだ・・・を呼ぶ。
一方、颯馬は、シラクモと土御門の戦いを横目にしながらも、鉄研に注意を集中していた。彼にとって、鉄研が領巾の力を使うか否かが最も重要なことだったのだ。
しかし、当の鉄研は、品々物之比礼を握りしめたまま動きを止めていた。
『・・・やっぱり決心がつかない・・・のか』
颯馬は、鉄研が極めて優柔不断かつ自己保身の強い人間であることをよく知っていた。普段は偉そうに振る舞っているし、自分のフィールドである商売の分野ではそれなりの決断力と才能を発揮するが、こういった答えのない問い、どちらをとっても何らかの損失がある状況に、彼は極めて弱いのだ。
陰陽師の方は剣を持った奴と結界を張った女性の方は大分力をすり減らしたようだが、その後ろに控えているやたら顔のいい長身の男は、力を温存している。その横の女性もだ。
あっちは四人、こっちは神宝があるとは言え、二人・・・。
普通クラスの陰陽師であれば、神宝の力でねじ伏せる自信はあるが、あの男の力を見るに・・・そして、あの後ろの二人の力も同じくらいと考えると・・・。
俺の持つ『足玉』はシラクモの『蜂肩巾』と違ってあまり戦闘に向かない。
しかし・・・。
颯馬は、チラと真白を見た。
俺らがここで逃げれば、この子は陰陽師に殺される・・・
はあ、はあ、はあ・・・
かなり、無理をした、とシラクモは思った。
十分な気の熟成を待たず、領巾の力を無理矢理に引き出したため体に結構な反動を感じる。このまま戦い続けるのは得策ではない。
ただ、それは向こうの術者、土御門も同様のようだった。
シラクモが使う神宝『蜂肩巾』(はちのひれ)が放つ虫たちを一瞬で払いのけるだけの力を神剣から引き出したことで、同じく反作用をその身に感じていた。
「手伝え!イタツキ!!」
シラクモが颯馬の方を振り返り、彼の名・・・シラクモにとって、彼は颯馬ではなく、『イタツキ』なのだ・・・を呼ぶ。
一方、颯馬は、シラクモと土御門の戦いを横目にしながらも、鉄研に注意を集中していた。彼にとって、鉄研が領巾の力を使うか否かが最も重要なことだったのだ。
しかし、当の鉄研は、品々物之比礼を握りしめたまま動きを止めていた。
『・・・やっぱり決心がつかない・・・のか』
颯馬は、鉄研が極めて優柔不断かつ自己保身の強い人間であることをよく知っていた。普段は偉そうに振る舞っているし、自分のフィールドである商売の分野ではそれなりの決断力と才能を発揮するが、こういった答えのない問い、どちらをとっても何らかの損失がある状況に、彼は極めて弱いのだ。
陰陽師の方は剣を持った奴と結界を張った女性の方は大分力をすり減らしたようだが、その後ろに控えているやたら顔のいい長身の男は、力を温存している。その横の女性もだ。
あっちは四人、こっちは神宝があるとは言え、二人・・・。
普通クラスの陰陽師であれば、神宝の力でねじ伏せる自信はあるが、あの男の力を見るに・・・そして、あの後ろの二人の力も同じくらいと考えると・・・。
俺の持つ『足玉』はシラクモの『蜂肩巾』と違ってあまり戦闘に向かない。
しかし・・・。
颯馬は、チラと真白を見た。
俺らがここで逃げれば、この子は陰陽師に殺される・・・

