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天狐あやかし秘譚
第41章 狂瀾怒濤(きょうらんどとう)

☆☆☆
「やめてぇ!」
白髪の少年に『イタツキ』と呼ばれた男の背後、村長である名越さんを介抱するかのように横に座っている少女が叫んだ。
漆黒の髪に抜けるような白い肌。その整った顔立ちにはまだ少しのあどけなさが残っている。おそらく年の頃は15歳くらいだろう。
土御門たちの話を総合すると、あれがおそらく名越の娘、真白、だろう。
名前の通り、清純な印象を与える美しい女性だった。
ところが、その娘が叫び声を上げた刹那、赤黒い靄のようなものが彼女の身体の周囲にまとわりついた。その靄は滑らかな白い肌に絡みつき、豊かな黒髪に沁み込んでいく・・・
眼球が上転し、黒目が見えなくなる。口が張り裂けんばかりに開き、赤々とした口腔内が不気味に晒された。
「な・・・何・・・?」
彼女を中心に膨れ上がる異様な気配が周囲に放たれる。体が震え、ドクン、と振動すると、その体躯が一回り大きくなった。
「が、が、あああぁ・・ああああ!!」
喉をのけぞらせ叫び声ともうめき声ともつかない奇怪な声を上げる。
皮膚がただれ、髪の毛がぼろぼろと抜け落ち、美しかった彼女は、元真白だった『ナニカ』に変貌していく。それを中心に吹き広がる風が、生臭い瘴気を運ぶ。
「ぐう・・・」
土御門と瀬良も口と鼻を手で覆う。そうでもしないと、満足に息もできない。彼女の隣にいた名越は変貌の第一段階で恐怖のあまりか、失神していた。
「ダリ!・・・あれ・・・あれ!」
当の私も口元を覆い、震える指でソレを指差すことしかできなかった。
「何だ!どうした!?真白!真白ぉ!!」
拘束されていて、後ろを振り返れないイタツキが騒ぐ。
ダリだけがこの場でゆとりを持ったような顔をしていた。
「なんじゃ・・・探す手間が省けたな」
ソレがゆっくりと立ち上がり、イタツキのもとに辿り着く。赤黒く爛れた手でいとも簡単に彼を拘束していた鎖を引きちぎった。
「ま・・・しろ・・・」
拘束を解かれたイタツキが振り返り、変わり果てた少女の姿に驚愕の表情を浮かべる。
「ぐおおおあああああおああおあお!!!!」
獣のようにソレが吠えると周囲の瘴気が一層、その濃度を高めた。
「やめてぇ!」
白髪の少年に『イタツキ』と呼ばれた男の背後、村長である名越さんを介抱するかのように横に座っている少女が叫んだ。
漆黒の髪に抜けるような白い肌。その整った顔立ちにはまだ少しのあどけなさが残っている。おそらく年の頃は15歳くらいだろう。
土御門たちの話を総合すると、あれがおそらく名越の娘、真白、だろう。
名前の通り、清純な印象を与える美しい女性だった。
ところが、その娘が叫び声を上げた刹那、赤黒い靄のようなものが彼女の身体の周囲にまとわりついた。その靄は滑らかな白い肌に絡みつき、豊かな黒髪に沁み込んでいく・・・
眼球が上転し、黒目が見えなくなる。口が張り裂けんばかりに開き、赤々とした口腔内が不気味に晒された。
「な・・・何・・・?」
彼女を中心に膨れ上がる異様な気配が周囲に放たれる。体が震え、ドクン、と振動すると、その体躯が一回り大きくなった。
「が、が、あああぁ・・ああああ!!」
喉をのけぞらせ叫び声ともうめき声ともつかない奇怪な声を上げる。
皮膚がただれ、髪の毛がぼろぼろと抜け落ち、美しかった彼女は、元真白だった『ナニカ』に変貌していく。それを中心に吹き広がる風が、生臭い瘴気を運ぶ。
「ぐう・・・」
土御門と瀬良も口と鼻を手で覆う。そうでもしないと、満足に息もできない。彼女の隣にいた名越は変貌の第一段階で恐怖のあまりか、失神していた。
「ダリ!・・・あれ・・・あれ!」
当の私も口元を覆い、震える指でソレを指差すことしかできなかった。
「何だ!どうした!?真白!真白ぉ!!」
拘束されていて、後ろを振り返れないイタツキが騒ぐ。
ダリだけがこの場でゆとりを持ったような顔をしていた。
「なんじゃ・・・探す手間が省けたな」
ソレがゆっくりと立ち上がり、イタツキのもとに辿り着く。赤黒く爛れた手でいとも簡単に彼を拘束していた鎖を引きちぎった。
「ま・・・しろ・・・」
拘束を解かれたイタツキが振り返り、変わり果てた少女の姿に驚愕の表情を浮かべる。
「ぐおおおあああああおああおあお!!!!」
獣のようにソレが吠えると周囲の瘴気が一層、その濃度を高めた。

