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天狐あやかし秘譚
第43章 陰謀詭計(いんぼうきけい)

☆☆☆
封印の儀の日。それは冬の寒さ厳しいある日であった。
斐川は滝で身を清め、特別に作られた堂に籠もった。堂の中には木で作られた形代が安置されていた。自らを囮にして呼び寄せた疱瘡神を、その形代に封じ込めるのだ・・・、斐川はそう説明されていた。
目隠しをされ、何も見えない状態のまま、手を合わせ、一心に祈りながら、疱瘡神が現れる時を待った。
そして、三日三晩が過ぎた頃、
ギィイイイイ・・・
とうとう、儀式が終わるまでは決して開かれることがないと言われていた扉が開く気配を感じた。
来た・・・。
外からの冷気とともに、何かが腐ったような不快な臭いが流れ込んできた。その臭いは斐川の正座している足に絡みつき、腰を這い上がり、体中を包みこんでいった。
何・・・、このひどい臭い・・・。
疱瘡神とは、このような臭いを発するものか・・・。
ヒタリ、ヒタリと何かが近づいてくる。それが自分の目の前で止まり、身をかがめてこちらの様子を窺っているのが分かった。鼻先にソレの息がかかる。先程にも増してひどい臭いだった。
『決して声を出してはいけない』
高重の言葉が頭に蘇る。
耐えなくては・・・。
おそらく、外では高重達が疱瘡神を形代に封印する手筈を整えているはずだ。それが整うまで、疱瘡神をここに留めておくこと・・・それが私の使命なのだ・・・。
そう、斐川は思っていた。
ぬらり・・・とソレが斐川の首筋を舐め上げた。寸でのところで、『ひい』と声を上げそうになるのをなんとか堪える。
何・・・此奴、何をしようと・・・。
なおも、ベチャ、ベチャと気色悪い音を立て、斐川の身体を味わうようにあちこちの皮膚を舐めあげてくる。その気持ち悪さに斐川は体を小刻みに震わせて耐えていた。
そのうち、周囲の様子に変化がある。
ズルル・・・ズルルぅ・・・ズル・・ズルルウ・・・
何かが周囲を這う音が聴こえた。木の床面に何かが這い回っている。それもひとつやふたつではない、十・・・二十・・・いや、もっとかもしれない。
「はあああ・・・あああ・・がぁぁぁあああぁ」
封印の儀の日。それは冬の寒さ厳しいある日であった。
斐川は滝で身を清め、特別に作られた堂に籠もった。堂の中には木で作られた形代が安置されていた。自らを囮にして呼び寄せた疱瘡神を、その形代に封じ込めるのだ・・・、斐川はそう説明されていた。
目隠しをされ、何も見えない状態のまま、手を合わせ、一心に祈りながら、疱瘡神が現れる時を待った。
そして、三日三晩が過ぎた頃、
ギィイイイイ・・・
とうとう、儀式が終わるまでは決して開かれることがないと言われていた扉が開く気配を感じた。
来た・・・。
外からの冷気とともに、何かが腐ったような不快な臭いが流れ込んできた。その臭いは斐川の正座している足に絡みつき、腰を這い上がり、体中を包みこんでいった。
何・・・、このひどい臭い・・・。
疱瘡神とは、このような臭いを発するものか・・・。
ヒタリ、ヒタリと何かが近づいてくる。それが自分の目の前で止まり、身をかがめてこちらの様子を窺っているのが分かった。鼻先にソレの息がかかる。先程にも増してひどい臭いだった。
『決して声を出してはいけない』
高重の言葉が頭に蘇る。
耐えなくては・・・。
おそらく、外では高重達が疱瘡神を形代に封印する手筈を整えているはずだ。それが整うまで、疱瘡神をここに留めておくこと・・・それが私の使命なのだ・・・。
そう、斐川は思っていた。
ぬらり・・・とソレが斐川の首筋を舐め上げた。寸でのところで、『ひい』と声を上げそうになるのをなんとか堪える。
何・・・此奴、何をしようと・・・。
なおも、ベチャ、ベチャと気色悪い音を立て、斐川の身体を味わうようにあちこちの皮膚を舐めあげてくる。その気持ち悪さに斐川は体を小刻みに震わせて耐えていた。
そのうち、周囲の様子に変化がある。
ズルル・・・ズルルぅ・・・ズル・・ズルルウ・・・
何かが周囲を這う音が聴こえた。木の床面に何かが這い回っている。それもひとつやふたつではない、十・・・二十・・・いや、もっとかもしれない。
「はあああ・・・あああ・・がぁぁぁあああぁ」

