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天狐あやかし秘譚
第43章 陰謀詭計(いんぼうきけい)
☆☆☆
親父の話を聞いた後、俺は、ふらふらとカフェを後にした。思考がうまくまとまらなかった。

俺は、足玉がなければ死ぬ。
でも、真白も、死ぬのだ。

親父は言った。
『名越の家は、分家まで含めて、一族の生命を疱瘡神の封印に捧げている・・・』
だから、頼むから足玉を返してくれ、と。

疱瘡神が解放されれば多くの人が死ぬとかなんとか言っていたような気がするが、そんなことは知ったことではなかった。俺にとって、大事なのは、たったひとりの命だ。

真白の、生命だ。

真白を救おうとすれば、俺が死ぬ。
俺が助かろうとすれば、真白が死ぬ。

真白は俺のことを憎んでいるだろう。当然だ、兄妹で有りながら、あのような鬼畜にも劣る行いをしたのだ。ただ・・・俺は・・・。

真白が憎かったわけではない。
真白に、死んでほしくはなかった。

俺と一緒に、生きてほしかった。

歪んでいるのかもしれない。壊れているのかもしれない。
しかし、これが俺の揺るぎない本心だった。

いつの間にか、俺は高台の公園に来ていた。遠くに夕焼けに染まる新宿のビル群が見える。ただ美しく、平和な世界。
多くの人があそこで息をし、笑い、泣き、暮らしを営んでいる。

なぜ、俺にはその平穏が与えられないのだ。
なぜ、俺は、愛おしいと思うことすら、許されないのだ・・・。

お前はもともと、身体だけではなく、心も病んでいるとでも言うのだろうか。

ガン!

八つ当たり気味に公園の鉄柵を蹴飛ばす。ビィンと淡い響きを残し、それは沈黙した。起きたことはそれだけだった。

俺には、選択肢が・・・ないのか。
ぎゅっと胸にかけた足玉を握りしめる。

俺が決心を固めようとしたその時、背後から声がした。

「イタツキ・・・随分悩んでいるようじゃないか・・・
 ひどいなぁ。ひとりで悩んで・・・。
 僕に、相談してくれたっていいんじゃないの?」

ドキリとして振り返ると、そこには、お館様が、夕日を受けて立っていらした。

「君は、僕の・・・大事な息子、なんだから」
そう言って、笑ってくださった。
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