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天狐あやかし秘譚
第44章 捲土重来(けんどちょうらい)

☆☆☆
「一体何が起こったの?」
ダリがやっとおろしてくれた。さっきまでお姫様抱っこをずっとされていて、ちょっとだけ恥ずかしかったのだ。
眼の前に起こっていることが信じられなかった。
これが、祓衆の陰陽師の戦い・・・なの?
穴の中で土砂が上から降ってきた時、ダリがとっさに結界を張って私達を守ってくれた。おそらくダリの力だけでも土砂を跳ねのけることは容易かったと思うのだが、『あんさんの力はあとに取っといて』と言い、土御門が動いたのだ。
彼は、ポケットから五芒が描かれた符を一枚取り出すと、右手の人差し指と中指の間に挟み、呪言を唱えた。
「前四 勾陳 土神 家在 辰主戦闘 諍訟凶将」
符は光を放つとぬるりと滴る水のようになり、地面に落ちて消えた。地面が光を放つとたちまち土壁が安定し、ダリの結界がなくとも、私達が圧死することはなかった。心做しか、周囲の地面が淡いオレンジ色に光っているようだった。
「土御門様が使う十二天将のひとつ、『勾陳』です。その性は土、地面に潜んで、そこから情報を得たり、地面に触れているものに自在に攻撃を加えられます」
瀬良が説明をしてくれる。なるほど、土の術を使う天将というわけか。
「ほな、行くで?」
私達を抱えた空間がそのまま土の中を上昇していく。土に潜りそれを操る勾陳の力だ。そして、そのまま一気に爆発的に地表の土砂を吹き飛ばしてしまった。
気がつくと私はダリにお姫様抱っこをされたまま、穴の外にいた、というわけだ。先程まで土が光っていたように見えたものが、いつの間にか、土御門を頭に乗せた金色の大蛇の姿になっていた。
後は土御門が敵である颯馬・・・イタツキと会話をしているだけのように見えたのだが、あっという間に敵が膝をついて倒れていた・・・というわけだ。
「勾陳は凶将です。土御門様が使う天将の中でも特に攻撃的な性質が強いのです・・・。土御門様がその気になれば、おそらく勾陳だけで優に陸自の一大隊くらいなら渡り合えますよ」
軍隊と渡り合える個人て・・・。
普段おちゃらけていて、力の底を見せようとしないので、そこまで強いとは思わなかった。これが、陰陽寮No1である『助の一位』の実力というわけだ。
「一体何が起こったの?」
ダリがやっとおろしてくれた。さっきまでお姫様抱っこをずっとされていて、ちょっとだけ恥ずかしかったのだ。
眼の前に起こっていることが信じられなかった。
これが、祓衆の陰陽師の戦い・・・なの?
穴の中で土砂が上から降ってきた時、ダリがとっさに結界を張って私達を守ってくれた。おそらくダリの力だけでも土砂を跳ねのけることは容易かったと思うのだが、『あんさんの力はあとに取っといて』と言い、土御門が動いたのだ。
彼は、ポケットから五芒が描かれた符を一枚取り出すと、右手の人差し指と中指の間に挟み、呪言を唱えた。
「前四 勾陳 土神 家在 辰主戦闘 諍訟凶将」
符は光を放つとぬるりと滴る水のようになり、地面に落ちて消えた。地面が光を放つとたちまち土壁が安定し、ダリの結界がなくとも、私達が圧死することはなかった。心做しか、周囲の地面が淡いオレンジ色に光っているようだった。
「土御門様が使う十二天将のひとつ、『勾陳』です。その性は土、地面に潜んで、そこから情報を得たり、地面に触れているものに自在に攻撃を加えられます」
瀬良が説明をしてくれる。なるほど、土の術を使う天将というわけか。
「ほな、行くで?」
私達を抱えた空間がそのまま土の中を上昇していく。土に潜りそれを操る勾陳の力だ。そして、そのまま一気に爆発的に地表の土砂を吹き飛ばしてしまった。
気がつくと私はダリにお姫様抱っこをされたまま、穴の外にいた、というわけだ。先程まで土が光っていたように見えたものが、いつの間にか、土御門を頭に乗せた金色の大蛇の姿になっていた。
後は土御門が敵である颯馬・・・イタツキと会話をしているだけのように見えたのだが、あっという間に敵が膝をついて倒れていた・・・というわけだ。
「勾陳は凶将です。土御門様が使う天将の中でも特に攻撃的な性質が強いのです・・・。土御門様がその気になれば、おそらく勾陳だけで優に陸自の一大隊くらいなら渡り合えますよ」
軍隊と渡り合える個人て・・・。
普段おちゃらけていて、力の底を見せようとしないので、そこまで強いとは思わなかった。これが、陰陽寮No1である『助の一位』の実力というわけだ。

