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天狐あやかし秘譚
第46章 屋烏之愛(おくうのあい)

♡ーーーーー♡
【屋烏之愛】きわめて愛情の深いこと、また偏愛・溺愛のたとえ。
愛がめっちゃ深くて、そのひとにまつわる何もかも好き好き♡、みたいな。
♡ーーーーー♡
私は、お兄ちゃんのことが大好きだった。
パパやママは優しかったけど、成長するにつれて、私はその優しさに疑問を持っていった。彼らの優しさは、私への愛情というよりは、何か距離を取っている・・・もっというと、怖がっている、という印象だったからだ。
たとえば、私が何かイタズラをしたとき、パパは一瞬眉間にシワを寄せるけど、すぐに頭を振って、それからにこりと笑って「大丈夫だよ、真白。真白は何も悪くないよ」などと言うのだ。
私は滅多にわがままを言わなかったが、それでも子供心にほしい玩具などはあった。久しぶりに街に連れ出してもらい、デパートなどで見ると欲しくてたまらないものなどもあったのだ。
「あれ買って!」
駄々をこねる。すると、ママは顔を曇らせ、パパを見る。パパが少し呆れた顔をして、そして、何を言われることもなく、その玩具は私のものになった。
お友達がバレエを習っていて、それが羨ましいと言うと、すぐに習い事が手配され、送迎までついた。お茶やお琴なども習わせてもらえた。お琴は最初は楽しかったけど、すぐに飽きてしまい、やめたい、と言ったら、これもすぐにやめさせてくれた。
その一方で、お兄ちゃんの希望はほとんど叶えられることはなかった。何かを言っても、かなり厳しく叱られ、『そんなものは必要ない』などと言われていた。
こんな風に兄妹で大きく育てられ方が違ったのだが、その最たるものが、誕生会だった。私が記憶する限り、お兄ちゃんの誕生会が行われたことはなかった。なのに、私の誕生日のときだけ、親戚だけではなく、村中の人が呼び集められ、大々的な誕生日パーティをするのだ。いや、誕生日パーティーと言うより、お披露目会、という方が近いかもしれない。私は大広間の舞台の上に着物を着せられて座らされ、人形のようにじっとしていることを求められた。村の人たちも親戚の人たちも、こぞって私の前に来て、頭を下げる。お祝いをしているというよりも、祭り上げられている、という感じで、私はとても居心地が悪かった。
【屋烏之愛】きわめて愛情の深いこと、また偏愛・溺愛のたとえ。
愛がめっちゃ深くて、そのひとにまつわる何もかも好き好き♡、みたいな。
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私は、お兄ちゃんのことが大好きだった。
パパやママは優しかったけど、成長するにつれて、私はその優しさに疑問を持っていった。彼らの優しさは、私への愛情というよりは、何か距離を取っている・・・もっというと、怖がっている、という印象だったからだ。
たとえば、私が何かイタズラをしたとき、パパは一瞬眉間にシワを寄せるけど、すぐに頭を振って、それからにこりと笑って「大丈夫だよ、真白。真白は何も悪くないよ」などと言うのだ。
私は滅多にわがままを言わなかったが、それでも子供心にほしい玩具などはあった。久しぶりに街に連れ出してもらい、デパートなどで見ると欲しくてたまらないものなどもあったのだ。
「あれ買って!」
駄々をこねる。すると、ママは顔を曇らせ、パパを見る。パパが少し呆れた顔をして、そして、何を言われることもなく、その玩具は私のものになった。
お友達がバレエを習っていて、それが羨ましいと言うと、すぐに習い事が手配され、送迎までついた。お茶やお琴なども習わせてもらえた。お琴は最初は楽しかったけど、すぐに飽きてしまい、やめたい、と言ったら、これもすぐにやめさせてくれた。
その一方で、お兄ちゃんの希望はほとんど叶えられることはなかった。何かを言っても、かなり厳しく叱られ、『そんなものは必要ない』などと言われていた。
こんな風に兄妹で大きく育てられ方が違ったのだが、その最たるものが、誕生会だった。私が記憶する限り、お兄ちゃんの誕生会が行われたことはなかった。なのに、私の誕生日のときだけ、親戚だけではなく、村中の人が呼び集められ、大々的な誕生日パーティをするのだ。いや、誕生日パーティーと言うより、お披露目会、という方が近いかもしれない。私は大広間の舞台の上に着物を着せられて座らされ、人形のようにじっとしていることを求められた。村の人たちも親戚の人たちも、こぞって私の前に来て、頭を下げる。お祝いをしているというよりも、祭り上げられている、という感じで、私はとても居心地が悪かった。

