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天狐あやかし秘譚
第46章 屋烏之愛(おくうのあい)

ぐうっとこれまでで一番深くまで何かが突き刺さる感触。お腹の中が壊れてしまうのではないかと思うほどだったが、それ自体は痛みはなかった。自分の中に何かが目一杯詰め込まれたような充満感があった。
『ぐううあああああ!』
ぎゅうううと私のお腹の中が蠢くのを感じた。そして、じわあっとした温かさが広がる。お腹の中はものすごくヒリヒリと疼いていたが、その中でビクビクと何かが跳ねていた。
その感触が何かの終わりを私に知らせる。決して超えてはいけない一線を超えた証のように思えた。
『うぐっ・・ぐっ・・ひぃ・・う・・・ううぅう』
恐怖、苦痛、喪失感、悲しみと不安・・・いろいろな感情が心の中で渦を巻いていた。どう感じたら、どう考えたら良いか全然わからないまま、ただただ、涙だけが出続けた。そんな私をお兄ちゃんはぎゅうっと抱きしめる。お兄ちゃんの顔も涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
しばらくそうやって抱きしめられて、やっと私の心がひとつにまとまってくる。
くる・・・しいの?
お兄ちゃん、苦しいの?真白を抱きしめていて・・・それで、楽になるの?
だったら・・・だったら、私がお兄ちゃんを・・・守らなきゃ・・・
世界で唯一・・・真白を見てくれる・・・お兄ちゃんを・・・
私もまた、お兄ちゃんの背に手を回し、おずおずと抱きしめていた。

