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天狐あやかし秘譚
第47章 猪突猛進(ちょとつもうしん)
「やめろおおおお!!!」

しかし、封印が完成する寸前、あらぬところから叫び声が聞こえた。

「颯馬さん!」

瀬良が声を上げる。颯馬が、瀬良を振り切って疱瘡神に向かって走っていた。

術を破る気か!?
無茶や!

そもそもが周囲に人がいないと発動できないほどの大呪だ。近づけば巻き込まれかねない。それに、今からでは、たとえ俺自身であっても、術を止めたり威力をそらすことは出来ない。

「バカ!近づくな!!」

しかし、颯馬はそのまま疱瘡神の方に向けて突っ走り、それに向かって手を伸ばす
そして、下半身をほぼ結晶化され、身動きが取れなくなった疱瘡神もまた、颯馬に向かって手を差し伸べていた。

「真白ぉ!!」

颯馬が手を伸ばし、真白の手を掴む。二人は互いを引き合い、そのまま固く抱きしめあった。

「兄様・・・」

ピキキキキ・・・

術が完遂し、二人は共に水晶の柱に封じ込められていく。

ちっ・・・
それが、お前の望みかよ・・・!

俺は歯噛みをした。なんや、結局、こちとら、誰も救えてないやんけ。

「結・・・」

水晶の柱の完成を見て、俺は最後の呪言を奏上した。
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