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天狐あやかし秘譚
第47章 猪突猛進(ちょとつもうしん)
『真白さん!・・・分かって!私は!私は颯馬さんを傷つけようとしていないの!あなたが、守ろうとしている颯馬さんは、そのままだと死んでしまう!』

ああ・・・綾音に言われるまで気づかなかった。
疱瘡神は、真白は、颯馬を守ろうとしている。あんな姿になってしまっても、彼女にはまだ人間の心が残っているのだ。
あれは、疱瘡神100%の力じゃなかったのだ。真白が、真白の人間の心の部分が、疱瘡神の力を抑え込んでいた状態。その状態であの出力だった、というわけだ。

わい等はえらい勘違いしていた・・・かもしれへん。
あのまま真白に術が命中してたら、とんでもないことになっていた可能性がある。

そんなこと分かってたわけやないやろ。
ただ、ひたすらに思い合ってる二人を助けたい、そう思っただけなんやろ?
綾音はん・・・、なんの力もないただの小娘のくせに、自分の命も顧みず、助けたい一心で、疱瘡神に飛びかかっていったって?
誰もが恐れる、病の神に体当たり・・・って・・・。
そんなん・・・カッコよすぎるやろ!?

そんな根性見せられたら、わいも、やるしかないやろが!

俺は蛇之麁正を両手で逆手に持ち、そのまま渾身の力で大地に突き立てた。

「北方黒帝 王水縷縷 星辰 溶々にして 霜天に散ず
 歳刑神 地より至りて 北門を閉じよ」

頼むで!素戔嗚の力、持っとるんやろ!
権能示せ!
「蛇之麁正ぁ!」

ぼこり!と、突きつけた先の地面から水晶の結晶が突き出し、水晶の列が一気に疱瘡神まで走り伸びていく。

「があああっ!!」

大地から突き出し、まとわりついてくる水晶を払いのけようと疱瘡神が雄叫びを上げ、もがく。しかし、蛇之麁正の権能をまとった水晶が地より這い伸びる力の方が遥かに強い。たちまち全身が凍りつくがごとく、水晶が疱瘡神の身体全体を覆い始める。

俺は剣に更に呪力を込めた。水晶が一段と大きく膨れ上がる。もがく腕を、足を水晶が凍りつかせるように固定していく。

方針転換や
封印・・・したるさかい・・・悪く思わんといてや・・・。
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