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天狐あやかし秘譚
第49章 淫祠邪教(いんしじゃきょう)

もちろん鉄研は必死になって颯馬を探し、足玉を取り返そうと画策した。そして、会えたことは会えたのだが、すでに足玉の神力を使いこなしていた颯馬を前に、それを取り返すことができなかったのだ。
ますます増大する疱瘡神に恐れをなした鉄研は、四分家の当主達に指示を仰ぐ。しかし、彼らの下した決断は『真白を閉じ込めよ』と、ただそれだけだった。
そこで、鉄研は本家の二階を真白を閉じ込めるための空間として改造し、そこに彼女を閉じ込めたのだった。本家の二階が奇妙な構造になっていたのは、女中たちが直接真白と接触しないでも生活できるようにし、疱瘡神の力が漏れ出すことを防ごうとした鉄研なりの工夫の痕跡だったのだ。
だが、神の力はそんなものでは抑えられなかった。
真白と直接の接触がなかったにも関わらず、名越家の女中のひとりが赤咬病に感染してしまった。鉄研は女の感染がバレるのを恐れ、その女を満足な治療をしないまま、実家の地下座敷牢に閉じ込めさせたのである。
こんなふうに犠牲者が出てもなお、四分家は疱瘡神を手放そうとはしなかった。村中の人が感染する可能性、さらに言えば、世界中に赤咬病が蔓延する可能性があったにも関わらず、自分たちの利益を失うことを恐れ、ただただ問題を先送りにしたのである。
困り果てたのは鉄研だ。疫病除けの呪符があると言っても、ヘタをしたら自分も感染して死ぬ。颯馬から足玉を取り戻すこともできない。日に日に膨らむ疱瘡神の力を感じ、震えていたに違いない。
ここで、運命の歯車がもう一つ軋みを立てて回り始めた。
真白が颯馬を愛していたのと同じように、颯馬も真白を愛していたのである。
真白も、颯馬も双方足玉を必要としている。
足玉はひとつしかない。
そこで、彼は一計を案じたのだった。
「模造品で不完全とはいえ、どんな神宝でも作り出すことができる『品々物之比礼』に目をつけたんやな・・・。あれがあれば、足玉をもうひとつ作り出し、二人で生きていくことができる・・・そう思ったわけや」
ますます増大する疱瘡神に恐れをなした鉄研は、四分家の当主達に指示を仰ぐ。しかし、彼らの下した決断は『真白を閉じ込めよ』と、ただそれだけだった。
そこで、鉄研は本家の二階を真白を閉じ込めるための空間として改造し、そこに彼女を閉じ込めたのだった。本家の二階が奇妙な構造になっていたのは、女中たちが直接真白と接触しないでも生活できるようにし、疱瘡神の力が漏れ出すことを防ごうとした鉄研なりの工夫の痕跡だったのだ。
だが、神の力はそんなものでは抑えられなかった。
真白と直接の接触がなかったにも関わらず、名越家の女中のひとりが赤咬病に感染してしまった。鉄研は女の感染がバレるのを恐れ、その女を満足な治療をしないまま、実家の地下座敷牢に閉じ込めさせたのである。
こんなふうに犠牲者が出てもなお、四分家は疱瘡神を手放そうとはしなかった。村中の人が感染する可能性、さらに言えば、世界中に赤咬病が蔓延する可能性があったにも関わらず、自分たちの利益を失うことを恐れ、ただただ問題を先送りにしたのである。
困り果てたのは鉄研だ。疫病除けの呪符があると言っても、ヘタをしたら自分も感染して死ぬ。颯馬から足玉を取り戻すこともできない。日に日に膨らむ疱瘡神の力を感じ、震えていたに違いない。
ここで、運命の歯車がもう一つ軋みを立てて回り始めた。
真白が颯馬を愛していたのと同じように、颯馬も真白を愛していたのである。
真白も、颯馬も双方足玉を必要としている。
足玉はひとつしかない。
そこで、彼は一計を案じたのだった。
「模造品で不完全とはいえ、どんな神宝でも作り出すことができる『品々物之比礼』に目をつけたんやな・・・。あれがあれば、足玉をもうひとつ作り出し、二人で生きていくことができる・・・そう思ったわけや」

