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天狐あやかし秘譚
第52章 【第12話 貧乏神】家徒四壁(かとしへき)
起業した会社はすぐにうまく行かなくなってしまったそうだ。そして、会社の業績が悪化するにつれて、家庭内でも不和が絶えなくなっていった。夫は、清美さんの実家に融資を頼みたいと言ったが、もともと勝ち気で独立心が強かった清美さんは、実家に頼ることを良しとしなかった。彼女は二人でなんとか頑張ろうと夫を説得しようとした。そのあたりから関係は修復不可能なまでにこじれだし、最終的には・・・

「私と話すのが嫌になったのだと思います。会社で雇っていた若い子と不倫をして、そのまま・・・」

家庭も会社もほっぽりだして逃げてしまったのだそうだ。

悪いことに会社が抱えていた負債は共同経営者扱いになっていた清美さんにのしかかり、清美さんがその債務整理を担う羽目になってしまう。しかし、持ち前の粘り強さでなんとか彼女はそれを完遂した。だが、頑張りもそこまでだった。債務整理が終わった頃には、彼女が自身で溜めた貯蓄も完全に底を尽いてしまうことになる。

家も手放し、結局は生活保護に頼らざるを得なくなった、という顛末だった。

「今日は、その生活保護費の受給と、職探しに行ってきていたんです」
恥ずかしそうにうつむきながら話していた。

そう、今日下ろした生活保護費は、今の清美さんにとって全財産といっても過言ではないのである。だからあんなにも動揺したわけだ。

「すいません。お聞き苦しい話を・・・」

恐縮する清美さんだが、私の方はなんだか、他人事とは思えなかった。
自分もつい先日まではそんな状況だった。いや、もっと悪かったかもしれない。

そんな話をしながら、とりあえず最初に訪れたという銀行に行ってみることにした。営業時間はとうの昔に過ぎており、当然、扉は閉まっていた。その様子を見て、清美さんは、ため息をついて帰ろうとするが、私は諦めなかった。まだ、ATMコーナーが開いる。そこに入り、係員への直通電話を手に取った。通じた先はコールセンターで、事情を説明しても、最初は『個別の支店の状況ですので』と取り合ってくれなかったが、しつこく言う内に、本店の事業部の電話を教えてくれた。
結局、そこに電話することができ、支店での落とし物の有無について確認を取ることができた。

結果としては届いてなかったのだが、これで可能性のひとつは潰すことができた。
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